2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380029
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
君塚 正臣 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (80266379)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 客観訴訟 / 非訟事件 / 略式裁判 / 文面審査 / 過度に広汎性ゆえ無効の法理 / 対審権 / 司法権 |
Outline of Annual Research Achievements |
司法権・憲法訴訟の研究を進め、平成26年度には以下の論説を公表した。 「対審権と伝聞証拠――The Story of Crawford v. Washington, 541 U.S. 36(2004)」大沢秀介=大林啓吾編『アメリカ憲法判例の物語』411-440頁(成文堂、2014年4月1日)では、アメリカの刑事手続上に関する憲法法理の研究を行った。「過度に広汎性ゆえ無効の法理」横浜法学23巻2号1-36頁(2014年12月25日)では、表現権規制場面における文面審査の一原則について、あまり分析が進んでいない点を踏まえて、検討を進めた。 そして、「司法権定義に伴う裁判所の中間領域論――客観訴訟・非訟事件等再考(2)、(3・完)」横浜法学23巻1号1-40頁(2014年9月25日)、3号111-146頁(2015年3月25日)では、前年度公表の「(1)」に続き、司法権の定義に鑑みれば、これまで必ずしもそうでないと解されてきた、非訟事件、略式訴訟、客観訴訟の多くの部分も「司法」であって、憲法の手続保障の要請が大きく関わってくることを指摘した。 また、本年度には、判例研究「戸籍法四九条二項一号の規定のうち出生の届出に係る届書に『嫡出子』と『嫡出でない子』の別を記載すべきものと定めることは、憲法一四条一項に反しないか(消極)」判例評論667号2-6頁(判例時報2226号132-136頁)(2014年9月1日)、「女性の再婚禁止期間の合憲性」水野紀子=大村敦志編『民法判例百選Ⅲ』12-13頁(有斐閣、2015年2月1日)を執筆したほか、野田進=松井茂記編『新・シネマで法学』(有斐閣、2014年9月10日)、憲法訴訟研究会=戸松秀典編『続・アメリカ憲法判例』(有斐閣、2014年9月30日)を分担執筆するなどした。法学教室に12回、演習を担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大きなテーマが確定している中、その中で執筆すべき課題もいくつかに確定しており、法科大学院長(法曹実務専攻長)の兼務の中、これを順調に執筆することができた。特に、司法権論については、3回の分載となるほどすべき議論が多かったが、これを完結させたことは大きい。表現の自由の司法審査法理として、残されていた、過度に広汎性ゆえ無効の法理についても検討でき、この分野の研究を完結できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を完結させるには、司法権論としては、先例拘束性のほか、議員定数不均衡訴訟を中心とする救済法の問題を検討し、かつ、立法の不作為、第三者の憲法上の権利の援用、終局性・ムートという憲法訴訟上の問題に言及せねばならない。このうち2つのテーマについて本年度中に論説として公表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
兼務していた仕事が忙しく、科研費で購入するほどの書籍や旅費の出費がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、法科大学院定員充足・司法試験合格状況、加算プログラムの成果などに鑑みて、法律系の予算総額が激減することに伴い、個人研究費のベースがゼロ(26年度は20万円)となり、科研費受託者でも3万5000円に減少する。このため、学会費を除く研究費の多く、特に書籍、旅費のほぼ全額は科研費から出費することとなるため、大幅な出費増となるものと思われる。
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