2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380032
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山崎 友也 金沢大学, 法学系, 准教授 (80401793)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 意に反する苦役 / 国民主権 / 裁判員の職務等 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成23年に最高裁大法廷が下した裁判員制度を合憲とする判決を素材に,憲法18条後段が禁止する「意に反する苦役」の解釈論の整理を行った。同最大判は,同条後段に関する初の判例であるが,その判示は簡潔で解釈の余地に富んでいる。そこで,同最大判の調査官解説や学説による評釈類もあわせて検討を行った。その概要は以下の通りである。 同判決は,下級審判決と同様に「裁判員の職務等」を国民民に課しても同条後段には違反しないとした。しかし,その論理構成には相違がある。東京高裁が下した一部の判決は,国民主権原理を「統治の主体」としての国民に「公共的な責務」課すものと解した上で,「裁判員の職務等」を国民主権原理が許容ないし要請するものとして同条後段に違反しないとした。これに対して平成23年最大判は,国民主権原理からストレートに憲法18条後段適合性を導くのではなく,国民主権原理のもとでのありうる立法政策として「裁判員の職務等」の賦課を肯定するに止まる。学説上は,「裁判員の職務等」を憲法上やむを得ない「苦役」として正当化するものもみられるが,平成23年最大判は,結局,裁判員の辞退が柔軟に認められていることを理由に,「裁判員の職務等」の強制性自体を否定したものと解される。 もっとも,同最大判が「裁判員の職務等」を参政権と類比している点には疑問が残る。参政権はあくまで憲法上の基本権であり現行法その行使を義務付ける規定はない。これに対して,「裁判員の職務等」は同最大判の思考によれば立法政策上の産物であるにもかかわらず,その行使を罰則付きで国民に義務付けている。このアンバランスについて同最大判は何も語っていない。「裁判員の職務等」を国民主権原理によって正当化する場合,このアンバランスをどのように正当化するかも問われよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英米の共和主義・討議民主主義の検討に着手できた。「徹底したリベラリズム」「強い個人主義」との対照から,国民の労役提供義務の限界設定についても違いがあることが判明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,金沢大学内外の研究者と密接な連絡を取りながら,憲法18条後段と国民の労役提供義務の関係の明確化に努める。北陸公法判例研究会のほか,日本公法学会,全国憲法研究会,憲法理論研究会,比較憲法学会に積極的に参加し,研究の深化を図る。
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Causes of Carryover |
予定した出張の取りやめ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費にあてる。
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