2015 Fiscal Year Research-status Report
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25380035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小西 敦 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (10431884)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地方自治法 / 行政組織法 / 公法学 / 法制史 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 本研究の目的:本研究は、昭和22年に制定された地方自治法について、以下の点を明らかにするものである。(1)同法の400件以上の全改正法について、改正経緯・改正事項・改正理由、(2)個々の改正法のうち「主な改正法」について、改正の趣旨・理由・背景、(3)同法の制定から現在までの略史、(4)以上の知見に基づく今後の同法の解釈や抜本改正、開発途上国における地方自治制度の設計への示唆。 2 平成27年度の研究実績:平成27年度は、以下のような研究実績を残した。上記(1)に関し、平成25・26年の2年間の34件の地方自治法改正法について、改正経緯・改正事項・改正理由を整理分析した(昭和22年から平成24年の改正に関しては、平成26年に『地方自治法改正史』(信山社)を発刊)。(2)に関し、「地方自治法の一部を改正する法律」という名称を取るものを「主な改正法」として把握し、昭和22年から平成26年の間に、こうした法律が、36件あることを確認し、その趣旨・理由・背景を、文献調査及び関係者ヒアリングにより調査した。(3)に関し、日本公法学会公募報告セッション(平成27年10月17日)において、「地方自治法の改正経過の素描」と題して、地方自治法の制定から現在に至るまでの改正を概観して、その成果と問題点を報告した。(4)に関し、「行政に関するアジア・太平洋地域機関」の機関誌(Comparative Studies of Public Administration)に、都道府県の条例により市町村への事務移譲を可能とする制度の内容と運用状況に関する英語論文を掲載、アジア諸国の研究者等に知見を提供した。さらに、『地方政治研究・地域政治研究』3巻1号(平成27年3月刊)に「『地方創生』の『総合評価』序章」を寄稿、分権改革の流れの中での「地方創生」法制の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年10月には、本研究の第一段階のまとめとなる『地方自治法改正史』(688頁)を上梓することができた。拙著は、平成27年度日本公共政策学会の著作賞をいただくことができたほか、地方自治法の標準的なテキストである宇賀克也『地方自治法概説第6版』(平成27年3月刊)において「資料的価値がきわめて高い」(12頁)と評していただき、地方自治法研究に関する多少の学術的貢献をすることができたと考えている。 平成27年度は、『地方自治法改正史』の網羅的な整理結果を活用して、「主な改正法」としての「地方自治法の一部を改正する法律」36件の深掘調査を、文献調査と関係者へのインタビューにより行った。主な改正法の中で、現在の地方自治法に大きな影響を及ぼしている占領期の改正法について、GHQ のTilton地方政府課長など関係者へのインタビュー記録等を探索するため、米国に調査に行くこととした。そのための準備として、Tilton氏に直接面談した経験がある有識者にインタビューを行い、調査項目の整理などを行った。平成27年度は、地方自治法改正の全体を簡潔にまとめることにも取り組んだ。その成果の一部は、平成27年10月17日の日本公法学会公募報告セッションにおいて、「地方自治法の改正経過の素描」として発表した。このほかにも、「行政に関するアジア・太平洋地域機関」の機関誌に英語論文を寄稿するなど、一定の成果を残すことができた。 一方で、平成27年度中の実施を予定していた米国訪問調査は、他用務の繁忙等により日程が確保できなかった。そこで、本研究を1年延期し、平成28年度に実施することとした。 上記のような状況であるので、相当の研究を行うことができたが、米国訪問調査の未実施と本研究のまとめの未完成を勘案して全体として「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度中に、以下のことを行う。(1)平成25年~27年の3年間の地方自治法の個別改正について、その時期と事項を整理し、平成24年までのデータと合わせ、再集計した上、分析する。これにより、昭和22年から平成27年までの約70年間の地方自治法の全改正法のデータを示す。(2)米国を訪問調査し、GHQ のTilton地方政府課長のインタビュー記録など占領期の地方自治法の立法・改正作業に携わった関係者の資料を収集する。(3)前記(2)の資料に基づいて、地方自治法改正へのGHQ関係者の意向の反映度を明らかにする。(4)地方自治法の「主な改正法」における議員立法の意義を考察する。(5)前記(3)及び(4)の研究成果を、「地方自治法改正における『行政外勢力』の影響」(仮題)として論文にまとめ、公表する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、他業務の繁忙等のため、予定していた米国における調査が、その日程を確保できず、実施できなかった。これに伴い本研究のまとめもできなかった。そのため、本研究の1年延長の承認を得て、海外調査のための旅費や本研究のまとめに要する経費等について、次年度の執行とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、(1)米国訪問調査にかかる旅費等、(2)前記(1)で得た資料の整理、翻訳等にかかる謝金等、(3)平成25年から平成27年までの約50件の地方自治法改正法の整理作業にかかる資料購入費・複写費・謝金等、(4)前記(3)の地方自治法改正法のうち「主な改正法」についての深掘調査のための資料費やインタビューにかかる旅費・謝金、(5)昭和22年から平成27年までの約500件の改正法の全データの再整理及び再点検等にかかる作業謝金、(6)研究の成果物の印刷等において、経費を要する見込みであり、平成28年度に繰り越した全額を使用する予定である。
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