2013 Fiscal Year Research-status Report
被告人の言語使用に対する各裁判所の訴訟指揮権行使の理由・範囲
Project/Area Number |
25380050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
榎澤 幸広 名古屋学院大学, 経済学部, 講師 (80536277)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 法廷通訳 / 訴訟指揮権 / 外国人 / 聴覚障害者 / 手話 / 方言 |
Research Abstract |
法廷内における言語事例(裁判所による被告人の言語使用認可、法廷通訳付与や通訳人採用方法など)を調査し、各裁判所毎の判断基準を整理することが本研究の目的である。 本年度は、札幌や東京などの高裁の基準を整理するため、裁判所に調査を依頼した。裁判所では、法廷通訳のパンフレットと通訳人候補者の高裁別言語別人数表は提供して頂いた。がしかし、各裁判所内の資料閲覧や聞き取り調査には協力できないとされたため、実際に現場に関わっている高裁地域の弁護士や通訳士らに協力をお願いした。 外国人、聴覚障害者、方言話者が当事者である事例を担当した弁護士ら(東京、仙台、博多、札幌)から話を聞くことができた。個人の経験を聞いているため、それがその地域の裁判所の傾向と完全に結びつくものではないことをあらかじめ指摘しておく必要があるが、以上のような成果を以下の三点に整理できる。 第一点目。従来(1990年代以前)は裁判所が訴訟指揮権を行使し、外国人に対して法廷通訳をつけない事例もあったが、現在(特に2000年代)はある程度日本語を話せる外国人に対しても法廷通訳をつける傾向にあり、弁護士の意向もかなり反映されること。第二点目。外国人用の法廷通訳候補者は各裁判所毎にかなり確保し充実してきているが、手話通訳士の確保人数はかなり少ないこと。第三点目。当事者が方言を使用した場合、標準語を使用する裁判官が意味を取り違える場合があるため、方言を理解できる弁護士が誤解を取り除くための媒介になっていること。 ただ、第二点目については、聴覚障害者に対し裁判官や弁護士らの中に無理解の人たちがまだいることを示しているとも捉えられるが、聴覚障害者の中には意思疎通がしやすい裁判所に登録されていない、お抱えの手話通訳士がいる場合もあるため、詳細な傾向を掴むには今後更なる調査が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、6つの高等裁判所(札幌、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)で調査を行う予定であったが、裁判所から調査協力を断られた(理由は不明)。依頼から回答までの時間がかなりかかったため(9月依頼で12月回答)、そこから研究対象の練り直し、依頼へと至ったため、残り時間が大幅に少なくなってしまった。翌年度のこともふまえ、依頼は、14の地域(高等裁判所と高等裁判所支部のある地域)にある弁護士会にした。結果、札幌、東京、仙台、福岡の弁護士と連絡がとれたため、彼らから直接話を聞くことができた(電話でのやりとりだけのものと直接会い聞き取りを行ったものがある)。当初の予定では、6つの場所での調査であったこと、各地域の言語使用者それぞれが関わるケースを調べることであったが、今年度実際に行えたのは、4つの場所からの聞き取りであったこと、そして、札幌は聴覚障害者の事例、東京は方言話者を除く事例、仙台と福岡は聴覚障害者を除く事例であった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究内容自体に変更はないが、先にも示した理由から、研究方法は弁護士や通訳士などの法廷内での言語事件に関係した人たちから聞き取り調査を行うという手法に変更した。 次年度は、残る10の地域での関係者(弁護士や通訳士など)からの聞き取りを行う予定である。また、本年度調査した地域もそれらの内容をより深化させるため、電話やメール、場合によっては現地調査も引き続き行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた裁判所調査ができなくなったことにより、研究対象者を変更せざるをえなくなった。裁判所側への依頼から回答まで時間がかかり、その後新しい対象者(弁護士)の選定と依頼を行った結果、聞き取り調査を行う日程が少なくなった。 今年度に調査を行えなかった地域(名古屋、大阪、広島)での聞き取り調査、次年度に調査を行う予定の地域(高松、秋田、金沢、岡山、松江、宮崎、那覇)での聞き取り調査を弁護士や通訳士から行う。
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