2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380052
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
越智 砂織 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (90300441)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 産学連携 / 共同特許 / 共同研究契約書 / 出願権 / 不実施補償 / 特許権 / 独占実施 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、産学連携を通して、大学と企業とで共同研究開発を行い、共有特許を取得した場合の諸問題、とりわけ税法問題および会計問題を取り扱うものである。当該年度に実施した研究成果は、研究実施計画書の計画にある内容と若干異なる。その理由は、平成25年度の研究において派生した問題を解決しなければ、次のステップに進めなかったからである。 そこで平成26年度は、「共有特許を実施するにあたり企業が大学に支払った不実施補償の損金算入問題」『税研』173号 PP.104-108(2014年1月発行)の積み残しの問題を論じた。積み残しの問題とは、産学連携において企業から大学に支払われる不実施補償の対価性についてである。企業から大学に支払われる不実施補償は、経済的価値を生み、共同研究の成果物は交換価値を有することから、収益との対価関係にあり、したがって損金算入できるとした。この件に関しては「産学連携における不実施補償の対価性と税法上の問題(1)・(2)」の論文においてまとめた。 次に、出願権および特許権の償却問題について、「企業が大学から持分譲渡を受けた出願権等の減価償却問題-出願権および特許権の償却資産性-」の論文において、出願権および特許権が、将来にわたってその効果が発現するにもかかわらず、無形固定資産として償却されていることについて実態に即した償却となっていないことに着目して論じた。 このように、当初の研究計画と若干異なるものの、平成25年度に行ったヒアリング調査の結果、また日々進化する産学連携の実態に即し、柔軟な問題提起で変化する産学連携の税法上の問題について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は、昨年度の研究成果の中で生じた問題について、さらに掘り下げることとなった。そのため、研究計画書にある権利譲渡に関する法律上および税法上の問題については、今年度行う予定である。 産学連携そのものが日々変化・発展しており、次々と新しい問題や産学連携のスキームが登場している。これらの変化についていくためには、当初の研究計画にない問題やまた派生する問題について論じなければならない。そのため研究計画書と若干のズレが生じることはあるが、これは想定内である。なお、残された課題については最終年度内に終わらせる予定である。 上述した新たな問題や新しい産学連携のスキームは、研究協力者からの提案である。研究協力者は、知的財産法が専門であり、東北大学 産学連携推進本部 知的財産部に所属しており、産学連携の実態に即したさまざまな提案をいただいている。租税に関する意見交換については、代表者が所属する神戸租税法研究会において、実務家(税理士)や租税法研究者から貴重なアドバイスをいただいている。 このような研究環境で、産学連携に関する問題を掘り下げて論文にまとめ上げたことは一定の評価が得られるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は残された研究課題を早急に進めるとともに、新たな問題が発生した場合、それを今後の研究にどう生かすかについて考えたい。 産学連携のあり方が急速に進展しているため、次々と問題が生じており、それらを順を追って解決していく予定である。産学連携にとって、この会計上および税法上の諸問題を解決すると産学連携が今以上に加速して成長することは疑いの余地がない。 欧米並みに産学連携を推進し、産業立国としての日本を確立するために、この税務会計問題の解決は急務である。 まず第一に、特許権の適正評価の問題である。産学連携においてその成果物を共有特許するだけでなく、実際には大学が企業に持分譲渡を行うが、その際、特許権あるいは出願権が適正に評価されていないのではないか。つまり、特許権の評価が適正に行われていない可能性がある。 第二に、仮に共同研究の成果物を共有の持ち分にするとして、共同研究費は企業負担であるのに対し、持分は共有(多くの場合は持分は半分)である。つまり、費用とそれに対する対価がアンバランスとなっている。加えて、出願費用なども企業負担であることが多い。このような歪みを問題点として論じる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究調査に行く予定の大学方面の天候不順および先方の都合により、調査に行くことができなかった。ゆえに当初の計画よりも旅費交通費の使用が少なかった。 反面、研究協力者に謝金を支払ったので、謝金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度も、謝金の発生と昨年度調査に行くことができなかった大学への調査費用として、旅費交通費が発生するため、繰り越して使用するものとする。 なお、謝金については、昨年度と同様に、年2回に分けて研究協力者支払う。また、調査結果を入力する必要性があるため、研究補助者に謝金を支払う予定である。
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