2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹下 啓介 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60313053)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際私法 / 国際金融 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度において貨幣の法的本質に関する新たな理論枠組みを構築するためには、単に従来の法学分野における貨幣論の研究を進展させるだけでは不十分であり、法律学を超えた幅広い視点からの分析が必要であることが確認された。そこで、平成26年度においては、法学分野における伝統的な貨幣論の研究をさらに進行させつつも、中心的には、法学以外の分野、具体的には文化人類学・経済学・哲学等における貨幣論の分析、例えば、Georg Simmelの貨幣論等を研究した。その結果、伝統的に法学分野における貨幣論においては国家主権との関係性が強調され、近時それが実務的な観点から批判されるものの、むしろ批判の対象となっている貨幣と国家主権との関係性についての理解が必ずしも十分でないことが問題であり、両者の関係性を肯定的にとらえるにせよ、否定的にとらえるにせよ、その点についての多角的な観点からの研究が必要となることが確認できた。 また、当初の問題意識にある貨幣論・金融論に関する実務と理論の緊張関係を適切に構築するという観点から、近時の国際金融法関係の文献を購読することで、近時の法学分野における国際金融法・貨幣法関係の業績のフォローアップも行った。さらに、ビットコインに関する問題を始めとする現代的な貨幣及びその周辺領域に存在する具体的問題の検討も行った。 なお、本研究における国際金融法研究と関連して、投資勧誘が行われた場合における法的問題、具体的には国際裁判管轄に関する議論も研究し、判例評釈を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
貨幣の法的な本質を探るためには、やはり法学分野を超えた視点で貨幣についての分析を行う必要があることから、研究の範囲を当初の予想よりもかなり広げる必要があり、その結果として、やや遅れている状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は研究の最終年度であり、3年間の研究成果を形にする必要がある。他方で、国際商取引における貨幣の法的な本質を包括的に明らかにするためには、法学を超えた視点での貨幣の分析が必要となることから、1年間でそれを実現することは非常に困難であると考えられる。そのため、平成27年度においては、貨幣の法的な本質についての分析を進めつつも、国際商取引において重要性が高いと考えられる理論的問題である外貨に関する分析を中心に据えて、研究成果を形にする作業を進める。具体的には、当初の目標である英語による論文の執筆を実施する。 その上で、3年間の研究で明らかになった点、さらに研究を深めるべき点を明確にし、科研費研究機関の終了後も本テーマの研究を継続することで、さらに、研究を発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度においては、当初の予算額(1,000,000円)と同程度の予算執行を行ったものの、平成25年度からの次年度使用額の執行までには至らなかった。具体的には、成26年には海外調査を想定していたが、研究対象分野を法学分野以外にも拡大して研究を実施し、海外調査以前の研究、具体的には国内における文献の検討等を重視したところであり、比較的多額の予算が必要となる海外調査を行わなかった。そのため、平成25年度からの次年度使用額までも予算執行するに至らず、平成27年度への次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては、これまでの国内における研究実績に基づき、海外出張等を積極的に実施する予定である。そのため、当初の平成27年度の予算額よりも、多くの支出が見込まれる。
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Research Products
(1 results)