2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 聡 東京大学, 先端科学技術研究センター, 客員研究員 (60447620)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際人権法 / 障害者差別解消法 / 障害法学(ディスアビリティ法学) / 合理的配慮 / 障害学 |
Research Abstract |
本研究は、障害差別禁止の概念を明らかにすることを目的とする。本研究を効果的に進める際の特徴は、「障害学」の知見を積極的に採り入れることである。このような本研究の目的と特徴に照らし、平成25年度は、たとえば次のような研究を実施した。 まず、私は共編著として『障害学のリハビリテーション』と題する書籍を上梓し、その中で、星加良司と共著で「障害学の「リハビリテーション」の企て」(序章)を執筆し,単独で「権利条約時代の障害学―社会モデルを活かし、超える」(3章)を執筆した。また、私は単独で「発声障害のある議員と発言方法の規制―名古屋高等裁判所平成24年5月11日判決」『新・判例解説Watch』Vol.13を執筆し、第185回国会の参議院外交防衛委員会に、「障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件」で、参考人として招致された。さらに、私は西倉実季と共同で、"Facial Disfigurement and Reasonable Accommodation"と題する発表を、アメリカ合衆国(ハワイ)において開催された"29th Pacific Rim International Conference on Disability & Diversity"という国際会議で行った(公募制)。 以上のほか、障害者権利条約と障害者差別解消法について、私は岩村正彦、菊池馨実、長谷川珠子と座談会を行い(「障害者権利条約の批准と国内法の新たな展開―障害者に対する差別の解消を中心に」『論究ジュリスト』8号)、インタビューを受け(「国連の障害者権利条約批准」『北海道新聞』、「障害者差別解消法ってなに」『朝日小学生新聞』)、「障害者の権利条約をめぐる若干の論点」『MIMI』143号、「無差別」『ノーマライゼーション』34巻3号、「障害者差別解消法Q&A」『シノドス・ジャーナル』を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本、英国、国連の関係実定法を素材にして、「障害学」の視点を踏まえて、内閣府障害者政策委員会差別禁止部会意見と障害者差別禁止法案(障害者差別解消法)における差別禁止の概念を明らかにすることを目的とする。私は次に記す成果を挙げており、現在までの達成度は良好で、本研究はおおむね順調に進展している。 まず、障害学に関する研究として、川越敏司、川島聡、星加良司共編著『障害学のリハビリテーション』を上梓した。本書には、川島聡・星加良司「障害学の「リハビリテーション」の企て」、川島聡「権利条約時代の障害学―社会モデルを活かし、超える」などの論文が所収されている。 また、障害者権利条約と障害者差別解消法に関する研究成果として、岩村正彦・菊池馨実・川島聡・長谷川珠子「(座談会)障害者権利条約の批准と国内法の新たな展開―障害者に対する差別の解消を中心に」『論究ジュリスト』8号、「障害者の権利条約をめぐる若干の論点」『MIMI』143号、「無差別」『ノーマライゼーション』34巻3号、「発声障害のある議員と発言方法の規制―名古屋高等裁判所平成24年5月11日判決」『新・判例解説Watch』Vol.13がある。そのほか、インタビューとして、川島聡「国連の障害者権利条約批准」『北海道新聞』、同「障害者差別解消法ってなに」『朝日小学生新聞』がある。 さらに、私は米国の障害差別禁止法を素材に、障害学の知見を踏まえて、西倉実季と共同で、"Facial Disfigurement and Reasonable Accommodation"と題する公募発表を、アメリカ合衆国(ハワイ)において開催された国際会議(29th Pacific Rim International Conference on Disability & Diversity)で行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、日本、英国、国連の関係実定法を素材にしながら、内閣府障害者政策委員会差別禁止部会意見と(本研究の申請書を私が執筆していた時期に国会提出が予定されていた)障害差別禁止法案とにおける無差別概念を、学際的アプローチによって、明らかにすることを目的としていた。 このような目的を据えた本研究の申請書を私が作成した2012年の後に、新たな動向として、障害者差別解消法(「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)が国会で成立した(2013年6月)。また、雇用分野の障害差別禁止と合理的配慮義務を定める改正障害者雇用促進法(「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」)が国会で成立した(同月)。いずれの法律も平成28年4月1日に施行される予定である。さらに、2014年1月に日本政府は障害者権利条約を批准した。この条約が日本について効力を生じたのは、2014年2月19日である。 これらの新しい動向は、私が本研究の申請書を執筆した段階において想定していた範囲内のことであり、本質的な部分において、研究目的と研究計画の内容に全く変更はない。そのため、平成25年度の成果を踏まえて、平成26年度も引き続き研究計画を実施していきたい。特に、平成26年度は、「合理的配慮の否定」の概念と他の差別概念との関係をより明確にしていきたい。他の差別概念とは、直接差別と間接差別(あるいは関連差別・起因差別)のことを意味する。直接差別は障害を理由とする障害者差別を意味し、間接差別(関連差別・起因差別)は障害関連事項を理由とする障害者差別を意味する。 以上のような研究計画を遂行する上での障壁は特にない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が873円生じた理由は、次のとおりである。まず洋書は、為替レートの変動により代金が時期により異なりうる。また書籍等は割引額で購入できる場合もある。それゆえ、直接経費の金額を超えないようにして支出をすることは非常に難しい。その結果、今年度は、873円の残高が生じた。そして私は、この873円は次年度の書籍代金に使用すべきである、と判断した。 次年度使用額の873円は、次年度の書籍代金にあてることにする。
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Research Products
(7 results)