2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 聡 東京大学, 先端科学技術研究センター, 客員研究員 (60447620)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際人権法 / 合理的配慮 / 差別類型論 / 障害法 / 障害学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、学際的アプローチによって、障害差別禁止の法理を解明することを目的としている。また同時に、本研究は、新しい学問領域「ディスアビリティ法学」(障害法学)の構築にも寄与することを目的としている。 このような本研究の目的に照らして、2014年度(平成26年度)は、たとえば次のような研究を実施した。まず、2014年12月に「欧州人権条約と合理的配慮」(『法律時報』87巻1号)と題する論文を、2014年7月に「障害者権利条約12条の解釈に関する一考察」(『実践成年後見』51号)と題する論文を、2014年6月に「代読裁判と権利条約―差別概念からの再構成」(川崎和代・井上英夫編著『代読裁判―声をなくした議員の闘い』法律文化社)と題する論文を、2015年2月に「マレーシアの障害児教育制度の現状と課題」(小林昌之編『アジアの障害者教育法制―インクルーシブ教育実現の課題』アジア経済研究所)と題する論文を、それぞれ公表した。さらに、2015年2月に『障害法』(成文堂、2015年)と題する教科書(菊池馨実教授及び中川純教授との共編著)を公表し、本書の中で、私は「第1章:障害法の基本概念」(菊池馨実教授との共著)と「第3章:国連と障害法」(単著)を担当した。 以上のような研究成果は、国際人権法における障害差別禁止の法理の解明に資するものである。それと同時に、以上の研究成果は、障害学の知見を踏まえた学際的アプローチを採用しており、従来の国際人権法学に見られない新しい学際的方法を発展させたものと考えることができる。このことは、「ディスアビリティ法学」(障害法学)の構築に寄与する学問的成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この評価をしたのは、私は、2014年度(平成26年度)に、「研究実績の概要」に記したような成果を残すことを通じて、本研究課題に順調に接近することができたためである。 私は、たとえば、「欧州人権条約と合理的配慮」と題する論文において、これまで不明瞭であった合理的配慮の法理を、欧州人権裁判所の判例を通じて、一定程度解明することができた。とりわけ、合理的配慮の法理と、いわゆるLRAの法理(より制限的でない他の選びうる手段の基準)との親和性を、欧州人権裁判所の判例の中に読み取ることができたのは、国際人権法における障害差別禁止の法理を解明するうえで有益な成果であると考えられる。 また、私は、「代読裁判と権利条約―差別概念からの再構成」と題する論文の中で、代読裁判を素材にして、合理的配慮の概念と従来の差別概念(直接差別・間接差別)とがコインの表裏の関係になりうることを論証することができた。このことも、有益な成果であると言うことができる。 さらに、『障害法』と題する共編著に所収された「第1章:障害法の基本概念」(共著)の中で、障害学の視点を法学領域に一定程度体系的に代入することができたのは、新しい学問領域「ディスアビリティ法学」(障害法学)の構築に寄与する有益な成果であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を今後進めていくための推進方策として、これまでの研究成果を踏まえたうえで、直接差別と間接差別と合理的配慮との関係をより精緻に理論化していくことがあげられる。 その際には、(1)障害者差別解消法に基づく「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」の策定や、(2)改正障害者雇用促進法に基づく「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(障害者差別禁止指針)の策定と「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(合理的配慮指針)の策定という日本の最新の関係動向も考慮に入れることにする。
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Causes of Carryover |
52310円は、平成26年度に必要な図書を購入するためのものであったが、本研究の進捗との関係で、さしあたり同年度に、その購入の必要がなくなった。そのため、この金額を、次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の52310円は、平成27年度に、本研究に必要な図書を購入する費用にあてる予定である。
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Research Products
(11 results)