2014 Fiscal Year Research-status Report
国際私法・国際民事訴訟法・仲裁法上の当事者自治原則の統一的把握とその応用可能性
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25380063
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中野 俊一郎 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30180326)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 当事者自治原則 / 国際仲裁 / 国際民事訴訟法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、当事者自治原則一般に関わる基本問題として、契約の成立に瑕疵があった場合に、それが仲裁合意自体の成立には基本的に影響を及ぼさないとする「仲裁合意の分離独立性(Separability)」原則が、仲裁法ならびに国際私法上どのような意味内容を有するか、またその限界はどこにあるかについて、比較法的見地から検討し、仲裁ADR法学会の学会誌において公表した。また、国際私法の一般理論に関わる問題として、日本の裁判所における準拠外国法の適用のあり方について研究し、2014年7月にウィーンで開催された国際比較法会議のセッション"Proof of and information about foreign law"のナショナル・レポートとして提出した(但し、病気の関係上、ペーパーの提出のみによる参加となった)。これは本年中に、ICCLP Publications No. 13において公刊される予定である。また、その一部をなす準拠外国法の内容不明の問題については、日本の裁判例を網羅的に調査した上で、いわゆる「次善の連結」説が実務的には十分な役割を果たしてこなかったことを実証的に示し、内国法適用説を根拠づける論文を執筆・公表した。このほか、仲裁法専門誌において、外国仲裁判例の紹介を継続して執筆・公表したほか、差止命令の国際裁判管轄と民訴法118条1号に関する最高裁判決(最判平成26年4月24日)、タイ裁判所を指定する国際的専属管轄合意の有効性に関する大阪高裁判決(大阪高判平成26年2月20日)の評釈を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外国法の調査・適用、準拠法外国法の内容不明の場合の扱い等については、英語での論文作成にやや時間を要したため、その他の研究の遂行にやや影響を及ぼしたが、内容的には、概ね満足すべき成果が得られたと考えている。仲裁合意の分離独立性原則に関する研究は、なお細部において詰めるべき点がないではないが、まとまった研究としては、おそらくわが国で最初のものであり、たたき台としての役割を果たすことはできるように思う。
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Strategy for Future Research Activity |
従来から継続して行ってきた外国仲裁判例の研究は次年度も継続し、比較法的視点から、仲裁合意と当事者自治原則の関係について検討を加えてゆきたい。国際民訴法の管轄合意の規律については、本年度に公表した判例評釈において一定の方向性は示したものの、なお検討すべき点が多いと感じている。法科大学院制度の混乱に伴い、昨年度より拝命している法科大学院長の職務が激増していること、昨年手術を受けた気胸が再発したことが大きな不安材料ではあるが、何とか折り合いをつけながら、研究目的の達成を目指したい。
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Causes of Carryover |
昨年手術した気胸が夏に再発し、医師から航空機の利用が禁止されたため、外国出張の予定を全てキャンセルせざるを得なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
気胸はなお完治の見込みがなく、再手術もできない状態であるため、今年度も海外出張はおそらく難しく、図書費、国内出張旅費による支出が中心になると思われる。
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