2015 Fiscal Year Annual Research Report
搾取型濫用・優越的地位濫用の規制に関する競争法上の研究・国際貢献の基盤構築
Project/Area Number |
25380070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白石 忠志 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30196604)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 搾取型濫用 / 優越的地位濫用 / 独禁法 / 競争法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、調査研究計画の中で重要な地位を占める知的財産権による搾取の問題について、EUだけでなく米国との比較も交えながら、英語による研究成果を執筆・完成させた。ケンブリッジ大学出版局からの書物に収録される予定である。日本においてこの問題が他に先駆けて研究されていることを示しつつ最新の状況分析を英語により発信しようとするものである。 また、そこにおいて重要な意味を持つサムスン対アップル知財高裁判決の競争法の観点からの位置付け・分析について、日本語による論文を公表した。日本においては、たまたま、特許法の言葉だけで標準必須特許問題への対応が解決したが、これは、この訴訟が特許法によるものであったという偶然と、日本の競争当局である公取委が必ずしも当時までの期間において標準必須特許問題について問題意識を発信しなかったという事情とによるものであり、この問題における独禁法の役割が小さいからではないことを明らかにした。なお、脱稿後、日本の競争当局である公取委も標準必須特許問題に関する考え方を公表している。 さらに、EU競争法に関する研究の副産物として、日本の競争法を英語で紹介する論文を共同執筆し、そのなかには搾取型濫用規制(優越的地位濫用規制)に関する記述も盛り込んでいたところ、これが英語による出版物の1章として刊行された。搾取型濫用(優越的地位濫用)規制を含む日本の独禁法に関する良きレファレンスとなっていれば幸いである。 外国研究者・実務家との交流も、他のプロジェクトによる渡航や他のプロジェクトによる専門家来日の機会を捉えて、搾取型濫用に関する意見交換も併せて行い、効果を上げている。これについては、次期につながる多くの手がかりを得ることができた。
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