2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380077
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
丸谷 浩介 佐賀大学, 経済学部, 教授 (10310020)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生活保護 / 社会保障法 / イギリス / 稼働能力 / 費用返還 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は①イデオロギー的解釈によらない生活保護紛争の解釈論提示、②イギリス法における解釈論の動向、③生活保護法解釈論体系の再構築にあった。この目的を達成するため、本研究の期間を通して、日本法における生活保護法裁判例の詳細な分析を行うとともに、イギリス法における立法の展開と裁判例の動向に注意を払い、研究に着手してきた。その結果、研究しなければならない紛争の類型ないし法に通底する基本理念が余りにも拡散しすぎるので、いくつかに焦点を絞って研究することにした。 第一の研究領域が、労働市場ないし労働環境の変化に伴う稼働能力活用の在り方である。日英を問わず、稼働能力を有する者が公的扶助を受給しようとする場合、その稼働能力を活用することが必要となる。しかし、その態様は一様ではなく、解釈論上も様々な困難を抱えている。これに加え、行政指針ないし立法政策も多様な変化を見せている。これらの論点について、日英比較に基づく法政策分析を行う『求職者支援と社会保障-イギリスにおける労働権保障の法政策分析』(法律文化社、2015年)と題する単著を出版するとともに、いくつかの関連する論文を提出した。 第二の研究領域が、受給過程における調査と過払い給付との関係であった。イギリス法では制度改革に伴った社会問題としてこれが処理され続けているが、日本法ではケースワークとの関係で論じなければならない論点が残されている。本研究では、生活保護法63条による費用返還と、生活保護ケースワークの法的論点について検討を加え、いくつかの論文を提出してきた。 これらの研究は想定した問題領域の大きな部分を包含しているのであるが、すべてを論じたわけではなかった。包括的な法解釈論の再構築を完遂することはできなかったが、かなりの論点を尽くすことができた。
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