2013 Fiscal Year Research-status Report
非正社員の均等待遇規制と間接差別規制の再定位―判例分析・理論分析を通じて
Project/Area Number |
25380081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
大木 正俊 姫路獨協大学, 法学部, 准教授 (00434225)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | EU / イタリア / 均等待遇 / 社会法学 / 雇用平等 |
Research Abstract |
本年度は、初年度なので(1)間接差別に関する立法および判例の検討(【第1段階:判例研究】)、および(2)文献研究(【第2段階:理論研究】)の準備作業をおこなった。 (1)については、資料収集を行いつつ、判例・立法の分析を通じて、(1)判例にみられる間接差別法理の規制範囲、(2)判例にみられる間接差別法理の規制根拠という2つの課題を具体的に明らかにした。 EUの判例分析については過去の研究が多かったため、それを参考にしつつ、最新の判例なども含めて総合的に検討した。過去の研究があったことから、初年度から本格的な分析をおこなうことができた。 イタリアについては、これまでの研究過程で収集した資料を活用しつつ、判例の網羅的な研究をするために、不足する分を早急に調達して分析し議論の整理をおこなった。 (2)については、文献の収集および日本における既存の議論の把握をおこなった。すなわち、理論研究において必要な資料を収集し、それらの分析を行った。理論研究においては、とくにブレーシャ大学のMarzia Barbera教授およびカターニア大学のBruno Caruso教授の研究協力をえて、必要な文献の収集およびその理解に努めることを予定していたが、本年度は海外調査をおこなうことができなかったため、Barbera教授の支援はうけなかった。Caruso教授については、カターニア大学法学部図書館のオンラインサービスなどを活用させていただくなどの協力をえた。 これとはほかに、本研究と関連する領域であるイタリアの有期労働契約法制の研究および日本における均等待遇原則に関する学説の議論の進展および新しい立法の位置づけなどに関する研究もおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りに研究は進んでいる。初年度の立法・判例の研究(【第1段階:判例研究】)は、日本語の文献がすでにいくつか存在することもあり、初年度から十分な研究をおこなうことができた。ただし、資料の分析および収集に若干の不足があるため、不足分について次年度も立法・判例の研究を続ける予定である。もっとも、これは当初の研究計画のごくささいな修正にとどまるものである。 理論研究(【第2段階:理論研究】)の準備作業となる資料収集については、予定していた平成26年3月の海外調査が実施できなくなったため、当初計画していたほどには、資料の収集がおこなうことができなかった。しかし、カターニア大学のBruno Caruso教授の支援により、同大学法学部図書館のオンラインシステムを利用することなどができたため、十分とまでは言い切れない者のかなりの文献を収集することができた。したがって、次年度は当初の計画通りに文献の収集よりは文献の分析のほうに比重をおいた研究活動ができることとなった。 また、本研究課題の結論に関連する作業として、イタリアにおける有期労働契約法制の史的な展開をあとづける研究および日本における均等待遇原則に関する学説の議論の展開および最近の立法の位置づけ(パートタイム労働法8条および労働契約法20条を中心に)に関する研究もおこなった。これらの研究に関しては、すでに成果を論文のかたちで公表をしている。これらの研究も本研究の最終的な研究成果をだすうえで重要な視点を提示してくれるものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究がおおむね順調にすすんだため、平成26年度以降も当初の計画通りに研究を推進させていく予定である。 まず、平成26年度は、【第2段階:理論研究】を中心におこなう。初年度に収集した理論研究にかかわる資料の分析のほか、追加的な資料収集とそれらの分析を行う。その際には、ブレーシャ大学のMarzia Barbera教授、カターニア大学のBruno Caruso教授らより引き続き支援を受ける予定である。平成26年度は、これとあわせて、初年度の【第1段階:判例研究】において不足していた部分についても追加的な研究をおこなう。初年度にくらべて、研究の重点は資料の収集から資料の分析のほうにうつっていくであろう。 平成27年度には、【第3段階:総括】として、第1段階および第2段階で得られた各論を総括する。すなわち、平成26年度までに得られた知見をもとに、非正社員の均等待遇規制と間接差別規制の法的位置づけを再考することを念頭に、間接差別法理が正社員と非正社員の均等待遇の領域までを規制対象としていることの法的な意味を立体的に描きだすことを予定している。 平成25年度には海外調査を実施できなかったため、平成26年度および平成27年度には海外調査を実施し、日本では入手が不可能または著しく困難な資料を収集するとともに、イタリア労働法およびEU労働法の研究者にインタビューを実施し、研究内容に関する助言をうける予定である。これによって、研究内容の正確性を確保することができるであろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末の3月に海外調査を予定していたが、直前になって他の用務との関係上これをおこなうことが不可能になったため繰越が生じた。 当初の計画では、平成26年度に1回海外調査を予定しているが、これを超えて追加的な海外調査が必要になった場合の費用にあてる。もしくは、平成25年度に海外調査を実施できなかった分、平成26年度の海外調査を当初予定していた期間よりも長い期間おこなうこと、および当初計画していたよりも多く発生している費用(国内出張による本研究課題関連の研究会への参加費など)に充当することを考えている。
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