2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
平野 美紀 香川大学, 法学部, 教授 (70432771)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オランダ / 末期医療 / 安楽死 / 自己決定 / 精神科 / 刑事施設 |
Research Abstract |
1年目は、まず、オランダの死の医学的決定の最近の状況について、インターネット上でも入手可能な、オランダ安楽死審査委員会の報告書の検討を開始した。そこで、オランダにおける自己決定の尊重についてについて、最近は、意思能力の問題が生じる精神疾患患者(主に認知症患者)の意思決定能力とその決定について、問題となるケースが多いことから、2年目以降安楽死を実行する側の注意深さの観点について検討することとし、精神科患者の権利擁護の観点からの医療上の意思決定について検討を行うことにした。特に日本では、精神科医療における強制入院制度(医療保護入院)に関して法改正が行われることになり、精神科患者をとりまく環境についても視野に入れる必要があるためでもある。そこで、認知症患者のナーシングホームや薬物患者の治療現場等を見学し、関係者と意見交換を行った。日本のように、患者と家族がともに治療環境におかれて医療上の決定を行う環境とは異なり、オランダでは、患者個人の自己決定が最大限に重要とされていることが明らかになったが、一方で精神科患者の意思決定のありかたについても、現在法改正の動きがあり、オランダ国内でも盛んに議論されているところであり、継続的に研究を行う必要性が認識された。 またオランダでは、最近は、安楽死の究極的な場面として、刑事施設における安楽死の可否も課題とされているため、オランダの刑事施設を複数訪問して、刑事施設における治療と自己決定についても、関係者と意見交換を行った。刑事施設における受刑者処遇についても日本とは大きく異なるものの、最近の我が国の刑事施設における摂食障害受刑者への強制的な治療と本人の同意については、大きな問題となりつつあり、刑事司法における受刑者の法的立場と医療についても今後視野に入れつつ研究を進めていくことにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、特に本人の意思決定能力が不明な場合における医療上の意思決定を、終末期医療、あるいは安楽死という究極的な場面において、どのように尊重するのかを、本人の生命の保持という権利とのバランスの中で絞殺していくことを目的としている。1年目においては、患者の自己決定を非常に尊重するオランダにおいても、精神科医療臨床現場や刑事施設における医療臨床現場においても、いまだに議論が続いている状況を、医療刑務所、通常の刑務所の医務室、触法精神障害者処遇施設、薬物患者の治療施設、認知症患者のナーシングホーム等の現場に赴いて、臨床現場に携わる実務家たちと議論を重ねることができ、また、法改正の動きについても知ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
継続的に安楽死審査委員会の報告書の検討を進めていく。オランダにおいては、安楽死という末期医療での患者の自己決定を尊重するため、医療者の安楽死行為について、刑事法的に認容(してその行為を正当化)するための要件は厳密でありかつ複数存在するが、要件の中で、特に重要な、医療者側の「注意深さ」についての議論をフォローしていく予定である。また統計や報告書を読むだけではどうしても理解しにくい、オランダ独特の背景をより深く理解するため、現場の医師へのインタビューを行うことを予定している。 また、オランダの精神科での患者の自己決定について、日本には文献等の資料がほとんどないため、オランダにおける法改正の動きとともに研究を進めていく。 さらに、昨年度実施した、刑事施設における医療上の自己決定についても、継続して研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品について端数が生じたため 消耗品に使用する予定である
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Research Products
(2 results)