2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380095
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 修 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40202361)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 在庫担保 / 購入代金担保 / 債権譲渡 / 債権回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、平成26年度までに行った債権譲渡担保および動産譲渡担保についての比較法研究をとりまとめ、公表した。森田修他共編『動産債権担保---比較法のマトリクス』(商事法務 2015年)である。 その後、比較法研究から、日本のAsset-based lendingの発展促進のための立法にいかなる示唆が得られるかについて検討を進めた。その結果、従来の比較法研究では十分取り組まれ来なかった問題点、具体的には所有権留保担保と動産譲渡担保との関係について、UNCITRAL等で進められている国際的な法統一、法整備を参照する必要が浮かび上がってきた。また日進月歩の取引界の実情に照らすと、この1~2年の間に、既に検討を済ました領域でもいくつかの重要な変化が生じていることが明らかとなった。そこで同じく比較法研究を進める人々共に、その後の進展と今後の立法論について雑誌の特集を組んだ「ABLの将来像と比較法」(NBL1070号)。 動産担保に関する以上の作業に27年度の前半が費やされたが、後半は当初予定していた不動産からの債権回収の比較法的検討に充てられた。論点として取り上げたのは、「割付残余価値の処遇」というテーマである。すなわち、担保不動産の価値が被担保債権額を上回っている場合に、その超過分(これが割付残余価値equity cushionと呼ばれる)が、他の債権者とりわけ後順位担保権者にどのように配分されるかという問題である。債権回収の集団的秩序を形成する重要な制度であり、日本では民法392条の代位の制度に見られるが、これとの興味深い比較法の対象となるアメリカのmarshallingに、27年度の後半は充てられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究のとりまとめとして書籍刊行自体に、大変な労力がかかり、27年度の前半はこれに費やされた。そのため本来の不動産担保の研究について、本格的に検討を開始するのが少し遅れてしまった。さらに、動産担保の領域と異なり、不動産物権に関わるこの領域は歴史研究や思想史的な研究まで必要とする領域であるために、渉猟すべき文献も多く、判例等の集積も著しい。そのため資料の分析に時間がかかり、」まとまった中間成果物を発表するに至っていない。ただ、資料収集自体は順調に進んでいるため、28年度中に遅れは取り戻せると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
28年度は、引き続き不動産からの債権回収の研究を進める。まず不動産担保法の重要論点として、「割付残余価値の処遇」に関する研究を、秋までに提稿する予定である。次いで不動産執行一般にも関わるものとして、ノンリコースの問題を取り上げたい。これは「割付残余価値の処遇」とは正反対の局面、すなわち、担保割れが生じて、担保不動産から債権者が債権全額の回収ができない場合に、その回収残を債務者の当該不動産以外の他の資産から回収できるか、という問題である。日本ではこの回収は認められることが当然の前提とされているが(民法394条参照)、アメリカでは、原則としてはそのような回収は認められず(これをノンリコースnon-recourseと呼ぶ)、「不足金判決」(deficiency judgment)という特段の手続を経て始めて、当該不動産担保債権者は債務者の目的不動産以外野志産にかかっていくことができるとされている点で、彼我の執行法制は興味深い対照を為している。他方、日本でも近時、ノンリコース条項なる手当を付した債権を用いた金融ストラクチャーも利用されており、この制度は実践的にも注目されているため、比較法の対象として取り上げてみたい。
|
Causes of Carryover |
7860円程度の残が生じたが、赤字を出さないように少し余裕を見た結果である
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額なので、今年度註速やかに消化できると思われる
|
Research Products
(2 results)