2015 Fiscal Year Annual Research Report
判断能力不十分者の法主体性回復に向けた成年後見法制と事務管理法制の体系的再解釈
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25380113
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
菅 富美枝 法政大学, 経済学部, 教授 (50386380)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 判断能力不十分者 / 助言の確保 / 脆弱な消費者 / 状況・関係性の濫用 / vulnerable consumer |
Outline of Annual Research Achievements |
本基盤研究の最終年度にあたる平成27年度は、英国オックスフォード大学を拠点として、「判断能力不十分者の主体性回復」という本研究課題について、主として契約法の観点から研究を遂行した。 具体的には、平成27年度前半は、英国判例法における「非良心的取引 (unconscionable bargaining)」取消の法理、及び、「過度な影響力の行使(不当威圧)(undue influence)」取消の法理に焦点を当てて、両法理の統合化と、現代的な機能拡大をめぐる議論を分析してきた。特に、2000年の英国最高裁判所によるEtridge判決以降、契約の有効性を保持するために、判断能力の不十分な人々を取引の相手方とする者に求められる「助言の確保」のあり方をめぐって議論が進んできたことから、関連判例の分析を丁寧に行った。これらの研究成果については、日本語での論文執筆と、国際学会における英語での報告発表という形で、国内外に発信した。 また、平成27年度後半は、同年10月1日より施行された「2015年消費者権利法」を基軸とする、イギリス消費者法の新体制(前年10月1日より施行された「不公正な取引行為からの消費者の保護に関する2008年規則」の改正を含む)の理論分析に焦点をあてた。特に、「平均的な消費者 (average consumer)」に比べて、認知上の障害を理由として「脆弱な立場にある消費者 (vulnerable consumer)」の観点に立った法規定のあり方(例「誤解を生じる取引行為」の定義や、「不透明な契約条項」の定義のあり方)に注目した。これらの研究成果については、合計3本の国内法雑誌への投稿という形で、日本国内に発信した。
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