2013 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける「良俗」概念の衰退と「人間の尊厳」概念の出現
Project/Area Number |
25380114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
幡野 弘樹 立教大学, 法学部, 准教授 (40397732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公序 / 良俗 / 身体損害 / 代理懐胎 / 相続分 / フランス |
Research Abstract |
研究実施計画では,1,人間の尊厳概念の検討を行うこと,2,2013年9月に,パリにおいて,日本の最判平成12 年2 月29 日民集54 巻2 号582 頁、いわゆる「エホバの証人」輸血拒否事件を紹介して、患者の自己決定権と生命の尊重・人間の尊厳との相克に関する日本の議論状況を紹介する予定であると述べた。 1,については,「代理懐胎と公序」という現在連載中の論文において紹介をする予定である。まだ連載では人間の尊厳の概念の部分まで進んでいないが,フランスでは「人間の尊厳」という,個人の自由・尊厳に優位する概念を承認することに賛成する立場と反対する立場に分かれている。その真っ向から対立しているそれぞれの立場について,紹介する予定である。 2,については,フランス側とのテーマの調整の結果,最終的には「身体損害」というテーマで報告することになった(2013年9月10日に,パリ第2大学において実施)。そこでも,人身・生命という法が最も保護しなければならないものについてどのように考えるかという根本問題が横たわる。交通事故の被害者は,実際には裁判官や弁護士会が作成した算定基準に基づいて賠償額を受け取ることになるが,その算定基準の持つ利点と問題点について分析を行った。これまで代理懐胎の事案をベースに研究を行ってきたが,身体損害という別の視点から,人体の法的地位を検討することにより,さらにはフランスの研究者と討論をすることにより,大いに視野が広がった。 さらに,平成25年9月4日に非嫡出子の法定相続分を違憲とする最高裁大法廷決定が出たため解説を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人間の尊厳概念や,良俗概念についてのフランスの学説上の議論は,臓器売買や代理母契約など、生命倫理の問題が意識されている。その意味で,「代理懐胎の合意と公序」論文の連載を始めることができたことにより,関連する問題点の議論を深めることができるものと思われる。ただし,現時点では,連載の1回目であり,序論で問題意識を述べるとともに,これからどういう議論をするかの構想を述べたに過ぎない。そこで,来年度以降,「研究の目的」で提示した「良俗」や「人間の尊厳」とは何かという点についても,議論を深めることができるのではないかと思われる。 以上のような状況を総合的に検討すると,「代理懐胎の合意と公序」論文の連載が始まった以上,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,「代理懐胎の合意と公序」という論文の連載を通じて,まずは「人間の尊厳」概念について検討を深めていくことを考えている。研究の目的では,フランスにおいて「人間の尊厳」概念が出現するとともに,「良俗」概念が衰退しつつある,という流れを押える予定であったが,現在は,「人間の尊厳」概念の出現という点について,さらなる検討が必要であると実感している。今後の研究の進展次第では,「良俗」概念の検討の重点が相対的に低くなる可能性がある。
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