2015 Fiscal Year Research-status Report
大陸法に根ざした循環型動産・債権担保法制の構築-ABL法整備に向けたモデル提示
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25380115
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
白石 大 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (90453985)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ABL / 在庫担保 / 売掛債権担保 / フランス法 / ケベック法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,当初設定した3つの分析視角のうち第3の視角,すなわち「倒産法制の基本設計との調和を意識しつつ,在庫・売掛債権に対する担保権の倒産手続における維持ないし変容をいかに規律するか(倒産法制の基本設計との調和)」という視角に基づく研究を行った。具体的には,平成27年9月にフランス・パリで開催された,担保法に関する日仏民法学者の会合に参加し,「担保目的の債権譲渡」というテーマで日本側の報告を担当するとともに,将来債権を客体とする担保が設定者の倒産局面においてどのように処遇されるかについてフランス側の研究者と意見を交換した。その主な判明点は次のとおり。「担保目的の債権譲渡」を受けた担保権者は,フランス法においてきわめて強力な保護を与えられている。とりわけ,判例によれば,ダイイ法譲渡の客体が継続的履行契約から生じる債権(賃料債権など)である場合には,のちに譲渡人の倒産手続が開始されたとしても譲渡の効力は影響を受けない。そしてこの結論は,倒産手続開始後に弁済期が到来する債権についても同様に妥当するとされている。この判例の立場は,次のように正当化することができる。すなわち,仮に弁済期未到来の賃料債権を将来債権と考えたとしても,ダイイ法譲渡は将来債権を客体とする場合でも直ちに第三者に対抗可能となるとされているので(通貨金融法典L.313-27条),譲渡対象債権は発生すれば即時に譲受人に帰属することとなり,譲渡後に生じた事象によってこれが妨げられることはない,と。なお,この会合の成果に関する論文をすでに執筆済みであり,これは平成28年5月に公表される予定である。 また,以上に加えて,平成27年度には,これまでの本研究課題の成果をまとめた報告を平成27年10月に日本私法学会において行い,その成果を広く学界に問うた。この報告内容に関する論文も平成28年5月に公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は,フランス法研究に関してはほぼ当初の予定どおりに進展させることができた。その成果もすでに論文執筆済みであり,平成28年度中に公表される見込みである。これにより,フランス法に関しては当初計画していた課題の研究をひととおり終えることができたと考えるが,この間,平成28年2月にフランス債務法の改正が実現したことや,平成27年に本課題と密接に関係する学位論文がフランスで刊行されたことから,平成28年度はさらにこれらについて補充的な研究を進めていく予定である。 他方,ケベック法に関しては,フランスへの渡航準備や学会報告準備に時間をとられたため,計画よりも進捗が遅れている。また,予定していたモントリオールでのインタビューも実施できなかった。平成28年度中にはこれを実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年11月のパリ同時多発テロ事件等を理由として,本課題は補助事業期間の延長を受けた。延長後の最終年度となる平成28年度は,まず遅れているケベック法の研究を優先的に行い,少なくとも3つの分析視角のうち2つの分析視角,すなわち「大陸法概念による制度構築」・「『刻む担保』モデルの維持」のついての検討を進めたうえで,その成果を公表する予定である。 また,フランス法については,平成28年2月に実現したフランス債務法改正が本課題に及ぼす影響についてさらに検討するとともに,平成27年にフランスで刊行された,本課題と密接に関係する学位論文についても検討を行う予定である。 なお,平成28年度は2回の海外調査(パリ・モントリオール)を予定している。
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Causes of Carryover |
本課題は,フランス・パリでの現地調査を予定していたが,平成27年11月の同時多発テロ事件を受け,渡航を見合わせざるを得なくなった。他方,本課題が対象とするフランス債務法は平成28年2月に改正が実現したため,改正後の議論状況を現地でフォローすることが研究遂行上も有意義である。これらの理由により,パリでの現地調査を平成28年度に延期することとした。また,研究代表者のスケジュール等の理由により,平成27年度中に予定していたモントリオールでのインタビューも実施できなかった。このため,旅費として予定していた金額(700,000円)とほぼ見合う額が未使用となったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,未実施の海外調査(パリ・モントリオール)を行うほか,主にケベック法の資料をさらに収集する予定にしており,これらに次年度使用額を充てることを計画している。
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