2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380118
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菅原 郁夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90162859)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 民事訴訟制度 / 意識調査 / 経年調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一の日的は、日本の民事訴訟制度に関する一般市民の意識を調査し、先に実施された2011年民事訴訟利用者調査と比較することによって、民事訴訟に対する実際の利用者と潜在的利用者の評価を比較し、民事訴訟の利用促進要因を探ることにある。また、過去2000年、2006年、2011年の3度にわたり実施され民事訴訟利用者調査と並行し、本研究と同様の一般意識調査も2003年、2009年に並行して行われているが、今回の調査はその3回目にあたる。本研究の第2の目的は、これらの調査結果の経年比較を行うことによって、この間の訴訟政策の効果の計測を行うことにある。 上記の目的のため、平成25年度に調査を実施し、全国10地域、21都市において、合計3000人を対象に郵送調査を行い、931人の対象者から回答を得た(回収率は31.0%)。平成26年度以降は、上記調査データの分析に着手、過去の一般意識調査との経年比較、民事訴訟利用者調査の結果との比較等を行った。 その結果、一般市民の評価においても、民事訴訟の手続や裁判官に関する評価が有意に上がったことが確認され、また制度全体に対する評価に関しても有意な上昇がみられた。しかし、その反面、民事訴訟の利用意思に関しては有意な低下が確認された。また、利用者調査との比較では、手続に関する評価では利用者の評価の方が高く、制度全般の評価に関しては一般市民の評価の方が高いことなどが確認された。 以上の結果は司法制度改革の成果を一定程度示すものであるが、反面、訴訟の利用意思の低下は、改革に逆行する結果でもある。原因解明が必要であるが、本研究では、制度改革の進行により市民の司法制度に対する理解が精緻化されたが、いまだ市民の要求水準に達していないため、より多くの情報にもとづいた分、実際に利用しよういう意思はこれまでによりも低くなったのではないかとの仮説を提示した。
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