2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380120
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田山 輝明 早稲田大学, 法学学術院, 名誉教授 (30063762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 武 関東学院大学, 法務研究科, 教授 (80257188)
山城 一真 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (00453986)
青木 仁美 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (80612291)
橋本 有生 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (90633470)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 成年後見制度 / 後見制度の歴史 / 医療代諾権 / 法定代理権 / 法の適用に関する通則法 / 在日外国人の権利擁護 / 国際研究者交流(ドイツ) / 国際研究者交流(オーストリア) |
Outline of Annual Research Achievements |
先ず、前年度の研究成果の公表に努力を注いだ。『成年後見人の医療代諾権と法定代理権――障害者権利条約下の成年後見制度』(三省堂、2015年5月末刊行予定)がそれである。障害者権利条約との関連では、成年被後見人の参政権は、すでに訴訟と公職選挙法11条の改正により解決された。その際、我々研究グループの前著『成年後見制度と障害者権利条約』は、弁護団を通じて裁判所に提出され、判決に影響を与えることができた。新書は、これから法律改正もしくは特別法の制定を求めるものである。 15年度には、9月末から10月に、オーストリア・インスブルック大学のゲルハルト・ケブラー教授と法制史辞書の著者であるウルリケ・ケブラー夫人を招いて、講演会を開催した。その理由は、成年後見人による医療代諾の問題を検討している中で、このように重要な問題について他人決定が果たして許されるのか、という本質的な問題に遭遇したため、原点に立ち返って、歴史的に研究してみる必要が生じたためである。研究成果の要点は、既にローマ社会から続く後見制度は、その時代の要請との関連で、司法のみならず行政を含めて、市民のセーフテイネットのために、有用な制度を構築しなければならなかったということである。今日においても、超高齢化社会という予想しえなかった事態を迎えて、後見人の権限問題のみならず、その確保と、見守りを中心とした注意義務の問題が最重要課題になりつつある。 さらに3月には、日本に居住する外国人にとっての成年後見制度の活用について、「法の適用に関する通則法」との関連で、早稲田大学名誉教授の木棚照一氏による講演会を開催した。その成果の公表は、現在準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
障害者権利条約との関連での改正提案の一部(選挙権)は、既に実現できたが、成年後見人の医療代諾権については、未だ立法上の課題として具体化していない。国連の障害者権利条約や欧州生命倫理条約などから、多くを学びながら、日本における立法的課題をさらに検討する必要がある。安易に成年後見人による代諾権を認めればよいわけでは決してない。重大な結果をもたらしうる手術等の医療行為については、原則として本人のみが承諾することができるということの重みを十分に受け止めたうえで、代諾のための厳しい要件を検討しなければならない。その意味では、5月に刊行予定の新著の諸論稿はこれに十分にこたえていると思われる。もっとも、法律学者(外国人を含む)と日本の精神医学者との主張が激突している点もあり、立法のための一定の方向が示せたわけではない。敢えて調整をしなかったのは、この問題の現状を示していると言えるからである。研究代表者としては、成年後見人の法定代理権と医療代諾権に関連して、民法の関連規定の改正として、提案を行っている(新著)。 常に原点に立ち返って、新しい問題の研究を進めるという態度を維持しているため、歴史的研究や外国法の研究を同時並行的に行ってきた。 在日外国人も高齢化が進んでおり、また、社会のグローバル化により、法改正を済ませたばかりではあるが、「法の適用に関する通則法」も課題を抱えている。 さらに成年後見人の見守り義務についても、被後見人が重度の認知症に罹患している場合等を中心にして、深刻な問題を提起している。この問題に関る比較法的な研究もドイツやオーストリアについて開始している。ドイツの専門家の話を聞く機会を持ちたいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
主として民法総則の後見関連規定の改正について考察してきたが、これと並行して、親族編の規定、特に、後見人の「見守り義務」についての比較法的研究も行いたい。間もなく最高裁判所の判決もしくは決定が出されると思われるが、その結果がどのようなものであれ、配偶者のような親族のみならず、親族後見人の「見守り義務」は重要な問題となるからである。成年後見人の法定代理権や医療同意権の問題についても、さらに研究を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度に、臨終介助と後見人の善管注意義務について、ガナー教授(オーストリア)およびクリー教授(ドイツ)にそれぞれお話をしていただく必要が生じ、フライブルク大学のクリー教授を招聘することが新たに決定したため、招聘に必要な費用が少なくとも一名分増額するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
クリー教授(ドイツ、フライブルク)の招聘に必要な費用、および一部を図書購入に充てる。
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Research Products
(15 results)