2015 Fiscal Year Annual Research Report
上場会社の不実開示時における損失分配ルールのあり方に関する研究
Project/Area Number |
25380121
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
和田 宗久 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60366987)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金融商品取引法 / 会社法 / 不実開示 / クラスアクション / アメリカ法 / 役員賠償責任保険 / 証券市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における研究実施者の研究目的は、「上場会社等において、とくに財務情報について不実開示が行われた場合に、当該上場会社が発行していた株式その他の有価証券の保有者(場合によって、当該不実開示に基づいて有価証券を売却したり、買取を断念した者も含む)らに対し、その保有していた有価証券の価値の下落等に起因する経済的損失に関して、法人たる会社として如何なる損害賠償責任を負うもの考えていくべきか、ということについて、債権者等の他の利害関係者との利害調整も踏まえた解釈論および立法論のあり方を考察する」というものである。 平成26年度には、最判平成24年12月21日判例時報2177号51頁(アーバンコーポレイション事件)の判例評釈(判例評論670号(判例時報2235号)13頁)を通じて、法人としての会社の不実開示責任(民事責任)に関する制度の主な趣旨・機能としては、「1.不実開示の抑止」および「2.不実開示がされた場合の、投資家に対する経済的損失の(一部の)填補を通じた証券市場の信頼性の確保・向上」にあるのではないかとの指摘を行っていたところであったが、平成27年度では、とくに前者の「不実開示の抑止」の面から、アメリカ法に関する分析を行った。 その成果の一部は『〈正井章筰先生古希祝賀〉企業法の現代的課題』(成文堂、2015年)に所収された「流通市場における上場会社の不実開示責任-アメリカにおける証券クラスアクションを巡る現状と議論の分析-」という論文にまとめたが、同論文では、アメリカにおいては、主に証券クラスアクションを起こさせるインセンティブを証券規制やD&O保健を通じて一部弁護士に与え、そうした訴訟を喚起すること通じて、不実開示の抑止を図る、という側面があったものの、近時の議論や合衆国連邦最高裁の判例は、そうした現状に対して疑問を呈しているような動向がみられることを指摘するなどした。
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