2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380122
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川島 いづみ 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50177672)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非財務情報の開示 / 統合報告 / 戦略報告書 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度における研究実績は、次の3つの内容に大別できる。 第1に、前年度末にイギリスで行った監督機関(FRC)や関連団体(IIRC)における聴取調査の結果をまとめ、収集した資料とともに整理して検討するとともに、6月にFRCが公表した戦略報告書指針(Guidance on the Strategic Report)の内容を検討し、また年度末にかけて公表された統合報告に関する日本語文献の収集・分析などを進めた。 第2に、統合報告に関するイギリスの制度改正(2013年の戦略報告書に関する規則の制定)に至る経緯と新制度の内容、その制度的意義等を原稿にまとめ、宝印刷総合ディスクロージャー研究所編『統合報告書による情報開示の新潮流』(同文舘出版・平成26年)所収の「第9章 統合報告と制度的対応-英国の統合報告に関する規制の試み-」として公表した。ここでは、イギリスにおける非財務情報の開示には、法制度化の前段階としてソフト・ローの活用があること、側面的支援として会社法に非財務情報の開示に関する民事責任のセーフハーバー規定が設けられたこと等も指摘した。 第3に、新制度の施行により、その適用を受ける年次報告書が平成26年秋以降に公表されることから、その実例とともに、実施状況に対する評価を確認したことである。現時点の印象では、実施初年度ということもあって、イギリスにおける戦略報告書の導入は、導入初年度からその目的を達成する、ということにはなっていないようである。年次報告書の頁数がさらに増加した例も散見され、次年度以降のFRCの取組みを、今後フォローしていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要な資料の収集・検討は順調に進んでいる。書籍刊行の機会に恵まれたため、『統合報告書による情報開示の新潮流』の中の1章として、イギリスの戦略報告書に関する規則制定に至る背景や経緯、規則の内容、監査、民事責任に関する側面的な制度等をまとめて公表することができた。書籍所収の原稿には字数の制限があったものの、これを機会にイギリスの戦略報告書制度について、元原稿として詳細な内容をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、これまでの調査・研究を総括し、イギリスの戦略報告書制度(統合報告の法制度化)について、導入後の実務の動向も踏まえて、また、わが国における非財務情報開示に関する法制を含めた制度的な整備に関する提言等を盛り込んで、研究論文に纏める予定である。できれば、論文に纏める最終段階において、研究会等でその内容を再度報告し、研究者や実務家との意見交換を行いたいと考えている。
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