2015 Fiscal Year Research-status Report
定期建物賃貸借は空き家問題を解決するか――定期建物賃貸借の法制度上の問題点
Project/Area Number |
25380123
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 靖浩 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10298094)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 定期建物賃貸借 / 定期借家 / 空き家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)ドイツ法のZeimieteの「締結」および「終了」の局面に関する法制度上の問題点の分析を進めると共に、(2)ドイツでの現地調査を行った。(1)は、日本法において定期建物賃貸借の「締結」および「終了」の局面に関して法制度上の問題が生じており、これが原因となって定期建物賃貸借が十分に活用されていないのではないかとの分析に基づき、ドイツ法のZeitmieteの状況を分析すること、また、(2)は、ドイツにおける空き家問題への取り組みの中で、(Zeitmieteを含む)賃貸借がどのように活用されているかを調査することを目的としている。 以上の目的に基づき、(1)については文献調査を、また、(2)については2015年11月、ハンブルク、ライプツィッヒ、ゲルゼンキルヒェンにて、行政担当部署や大学研究者へのインタビューや現地視察をそれぞれ行った。 その結果、特に(2)の現地調査において、当初の研究計画で想定していなかった新たな知見が得られた。 すなわち 、調査先のライプツィッヒにて、市街地中心部の空き家をそのまま放置しておくのではなく、希望者に格安で貸し出し、借主が芸術活動などの活動を行うことによってその空き家の価値を高め、いずれは市場家賃で貸し出せる住宅として再生するというプロジェクト(「守り人の家Waechterhaus」プロジェクト)を知った。このようなプロジェクトの存在からは、たとえZeitmieteなどの賃貸借制度を整備したとしても、実際の現場では、それだけで空き家となった持家を賃貸住宅として活用することにはつながらないこと、むしろ、空き家の積極的活用を図るためには、非営利活動団体等が介入して、意欲的な借り手を募り、空き家の所有者と借り手とを結びつける必要があることなどが示唆されるように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)ドイツ語文献の調査により、ドイツ法のZeitmieteの「締結」および「終了」の局面においてどのような法制度上の問題が生じているかを引き続き分析し、また、(2)現地調査にて、ドイツにおける空き家問題への取り組みの中で、(Zeitmieteを含む)賃貸借がどのように活用されているかを調査することを計画していた。 これらのうち、(2)については、現地調査先のライプツィッヒにて興味深いプロジェクトに接したことにより、新たな知見を得ると同時に、本研究課題をより良く解明するために、同プロジェクトについてさらに調査をする必要が生じた。この知見は、Zeitmieteの法制度上の問題点を分析することにも再考を迫るものであったことから、(1)の作業と並行しつつ、(2)の作業を進めた。 以上より、現在までの達成度を上記のように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により、ライプツィッヒにおける「守り人の家Waechterhaus」プロジェクトをさらに調査する必要が生じたことから、補助事業期間延長を申請し、その承認を得た。そこで、同プロジェクトに関する文献および資料等を用いて、同プロジェクトが開始された経緯、空き家問題の解決におけるその意義と課題等を調査する。そして、その調査結果の中から、ドイツ法のZeitmiete あるいは日本法の定期建物賃貸借が空き家問題の解決のために機能するか否か、また、機能する場合の条件等を抽出することにしたい。 なお、今年度の当初の計画では、オーストリア法におけるZeitmieteをめぐる議論の動向をフォローすることも予定していた。しかし、上記プロジェクトが空き家問題の解決にどのようなインパクトを与えるかを分析する方が、本研究課題により密接に関わると考えられることから、オーストリア法の分析はごく概括的にとどめ、むしろ、上記プロジェクトの分析に重点を置く。
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Causes of Carryover |
2015年11月の現地調査により、ドイツ・ライプツィッヒの「守り人の家Waechterhaus」プロジェクトをさらに調査することが必要となり、補助事業期間の延長を要することから、主に同プロジェクトの調査にかかる費用分を次年度に回した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ドイツ・ライプツィッヒの「守り人の家Waechterhaus」プロジェクトに関する文献・資料等の購入、および、本研究をまとめるために必要となる文献・資料等の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)