2015 Fiscal Year Research-status Report
私人による違法行為の抑止とエンフォースメントの比較法的研究
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25380127
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
楪 博行 白鴎大学, 法学部, 教授 (20331332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗山 修 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00170093)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民事法 / 不法行為 / 証券取引 / 違法行為の抑止 / エンフォースメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、損害賠償の抑止効果とエンフォースメントにつき、3点の検討を行った。第1に、アメリカの状況を踏まえたイタリアの法制度を媒介とする検討を行った。第2に、証券取引におけるエンフォースメントにかかるアメリカ合衆国連邦裁判所の最新判例を分析した。そして第3に、損害賠償の抑止効果とエンフォースメントの状況を訴訟、倒産手続、そして和解の側面から考察を加えた。 イタリアにおいてはアメリカの制度を参考にして、立法措置による損害賠償の抑止効果とエンフォースメントが試みられている。アメリカでは20世紀後半にかけて、クラス・アクションが損害賠償の抑止効果とエンフォースメントに多大な影響を与えてきた。しかし、現在では不法行為クラス・アクションの承認が否定的な傾向となったために、不法行為訴訟における損害賠償の抑止効果とエンフォースメントが期待できない。そこで、不法行為においても証券取引の領域と同様に、和解を目的とするクラス・アクションが提起されている。また、倒産手続とりわけ再建型手続においては、最近では和解および信託設定による手段が講じられている。そこで、和解により損害賠償の抑止効果とエンフォースメントが期待できるのである。ただし、和解交渉における詐欺防止手段がいかなるものとなるかの検討が必要である。 本年度研究は、アメリカにおける損害賠償の抑止効果とエンフォースメントを多面的に分析するとともに、この分析結果をイタリアの法制度を媒介としてわが国の法制度へ架橋する意義があった。損害賠償の抑止効果とエンフォースメントについて先行していたアメリカであるが、現在では訴訟においては必ずしもそれが実現されていない。しかし、これらの最大効果を発生させる手段は和解であり、まさに違法行為抑止とエンフォースメントが私人により実現されていることを示すものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画であるアメリカとイタリアの法状況との比較検討はおおむね順調に進展している。この点に加えて、昨年度における研究過程において生じた、訴訟、倒産手続、そしてADRの各側面で損害賠償の抑止効果およびエンフォースメントに相違が存在するのかという課題の検討を行ったことは、当初の計画以上に研究が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、まず本年度研究において示された和解を媒介とする損害賠償の抑止とエンフォースメントについて、関連する制度である先行審理(bellwether trial)、和解案作成のための外部機関であるスペシャル・マスター(special master)の状況から検討を加える。次に、来年度が研究最終年であるため、研究成果の総括的研究報告の作成を行う。いずれについても順次紀要論文等の形式で公表する。
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Causes of Carryover |
対ドル為替レートが円高となったため、当初予定した書籍の購入を一部見送った。その結果、使用額が減額し余剰金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に購入できなかった、ファイルなどの文具費用に充当させる。
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