2015 Fiscal Year Research-status Report
イノヴェーション促進法制としての植物新品種保護法の理論的課題に関する総合的研究
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25380130
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平嶋 竜太 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (70302792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 消尽 / 自家採種 / 育成者権 / 現物主義 / 特性表主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1 農業分野におけるイノヴェーション促進法制としての観点から生じる植物新品種保護法制における理論的課題の明確化と対応、2 日本における現行種苗法の下での育成者権のエンフォースメント確保のための制度設計、3 国際的な知的財産法制フレームワークにおける植物新品種保護法制の位置付けの再定義の可能性、という事項について理論的観点から検討を行った上で、一定の結論と将来的方向性を導出することを目的とするものである。 本年度当初計画の最終年度にあたり、上記主要な研究事項についての検討結果を踏まえた総合的検討及び総括を中心として行うこととなっていたところであるが、研究期間延長を申請・承認されたように、当初研究計画自体に変更及び遅延が生じている。 もっとも、上記研究事項1及び2については所定の成果が得られた。 すなわち、上記研究事項1の成果として、植物新品種保護法による農業分野におけるイノヴェーション促進には大きな限界が存していることが国際的にも認識されつつある傾向が明らかとなってきた。このため、特許制度を活用した植物新品種開発成果物の保護へのウエイトが今後高まることが示唆され、更なる研究が必要となるという知見を得た。 また、上記研究事項2の成果として、現行種苗法の下ではエンフォース面での強化を行うためには、特許制度に近接した制度設計が望ましいという成果が得られた。また、それ以外に、農業分野における固有の法的救済制度のあり方についても探求する必要性の存在についても見出された。この点は、今後の追加的な研究事項が明らかにされたといえる。 さらに、計画進行の遅れもあって、未だ途上の部分が多く残されている、上記研究事項3に係る研究計画については、特許法と植物信品所保護法制の調和・棲み分けのあり方を中心に研究を進める方向性へと変更することが望ましいという示唆を得たところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、1農業分野におけるイノヴェーション促進法制としての観点から生じる植物新品種保護法制における理論的課題の明確化と対応、2 日本における現行種苗法の下での育成者権のエンフォースメント確保のための制度設計、3 国際的な知的財産法制フレームワークにおける植物新品種保護法制の位置付けの再定義の可能性、という事項について理論的観点から検討を行って、一定の結論と将来的方向性を導出することを目的とするものである。 本年度は、当初計画では、最終年度にあたり、上記主要な研究事項についての検討結果をすべて行った上で、その成果を踏まえた総合的検討及び総括を中心として行うこととなっていたところであるが、研究期間延長を申請した事由により、当初研究計画自体に変更及び遅延が生じている。このため、延長申請が承認された次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
これらの研究成果から、計画進行の遅れもあって、当初計画の研究事項の未着手の部分について見直し、学術的・実務的な観点からも重要性の低いと評価されうる事項については、他の研究事項と統合整理することによって、できる限り効率性の高い研究計画を推進したいと考えている。 上記研究事項2である「日本における現行種苗法の下での育成者権のエンフォースメント確保のための制度設計」については、特許制度の下でのエンフォースメントを参照する意義は大きいという方向性は得られたものの、他方で、農業分野固有の事情を考慮した固有のエンフォースメントの仕組みを探求するということに相応の意義が見出された。このことから、この点についての調査研究に重点を置きたい。 上記研究事項3である「国際的な知的財産法制フレームワークにおける植物新品種保護法制の位置付けの再定義の可能性」の未着手部分の研究計画については、特許法と植物信品所保護法制の調和・棲み分けのあり方を中心に研究を進める方向性へと変更することが望ましいという示唆を得たところであることから、両制度を統合する方向性の制度論案と並存調和を志向した場合の制度案という大きく異なる2つの制度案モデルを仮想的に立てて、比較検討するという手法での研究を計画している。
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Causes of Carryover |
本研究計画については、研究代表者の親族(両親)における介護・入院に伴い、対応を要する時間が急激に増加して研究に当てられる時間が極めて減少したこと、本研究に関連した制度的動向が国際的に生じていること、という主として2つの理由により、研究の進捗に遅延が生じているため、研究期間の延長をしているところ、次年度使用額が生じた理由としても、主として研究計画の遅延に伴うものといえる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究計画の新たな課題及び未着手の事項を実施するために、使用する計画である。
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