2014 Fiscal Year Research-status Report
越境地下水の統合的ガバナンス-比較法・国際法的考察-
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25380133
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 充郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (70380300)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水資源 / 地表水 / 地下水 / 生態系保全 / 地方 / 住民参加 / 国内法 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度も、水問題を含む資源・エネルギー問題全般における他の問題領域との比較に基づき、実体面及び手続面から日米比較研究と国際法の研究を進めた。主な活動として、第1に、2014年11月13-19日にCalifornia州のAntonio Rossmann弁護士・UC Berkeley講師(Rossmann & Moore, LLP)を訪問するとともに、公共信託法理の拡大適用で名高いモノ湖事件シンポジウムに参加した。第2に、2015年3月6日から11日には、Rossmann弁護士を関西に招聘し意見交換を行い、次の成果を得た。 まず、国内法・比較法(手続面)の研究として、第1に、司法判断が分かれた諫早湾干拓池における開門請求事件の判例評釈を自治研究に公表した(2015年3月公表)。第2に、台湾で出版された書籍に原子力法に関する論文を公表した。第3に、水質汚染規制の比較対象としてPM2.5問題を念頭において大気汚染規制に関するシンポジウム報告を行うとともに(2014年10月・大阪大学。2015年3月公表)、日本法哲学会(2014年11月8日・京都大学)において、原子力政策及び個別の設置許可処分について司法判断が分かれる場合を視野に入れて意思決定手続きに関する研究発表を行った。第4に、国際ワークショップにおいて、計画策定や個別処分における地方自治体及び住民への意見聴取について、流域管理法制と原子力法制を比較しつつ研究発表を行い、水質規制に関する上乗せ条例の可能性について講演を行った(2015年3月。大阪大学及び青森県十和田市)。 また、国際法については、鳥谷部壌(RA)が、前年度の調査を踏まえて阪大法学や環境管理にアメリカ・カナダの国境地域を管轄する共同国際委員会(IJC)や国際河川の非航行利用に関する条約の発効に関する成果を公表し、実体面及び手続面で着実に成果を上げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水法の実体面の国内法上の研究成果は国内法については研究会報告にとどまったが、水法の実体面・手続面の国際法的研究と水法以外の他分野との比較及び水法の手続面の研究では、海外の書籍での論文掲載・判例評釈・学会報告・国際ワークショップ報告等の成果を出すことができた。 すなわち、従前から、国内法・国際法の両面に関わる実体面・手続面の原理的課題として、California州法上の水利権・政府の権限の制約原理である合理的使用の法理及び公共信託法理の解明に取り組んできた。また、西海岸の水源である国際河川・州際河川コロラド川の流域管理に注目し、国内法の水取引と環境配慮の統合の事例であるQSAとアメリカ・メキシコ間の国際的な水資源配分及び環境配慮の統合の問題に取り組んできた。しかし、合理的使用の法理・公共信託法理の拡大適用とその実効性・事例研究であるQSAについては、11月にシンポジウムがあったために、年度内の論文公表を見送った。その代わりに、二件の研究会報告において(2014年12月26日大阪大学及び2015年3月2日・龍谷大学)、California州における前述の諸法理の発展からひも解き、同州の水資源供給の幹線であるサクラメント・サンホアキン川流域における連邦政府・州政府及び利水者・環境保護団体の合意形成の現状と環境影響評価訴訟の進展に関する研究会報告を行った。また、Antonio Rossmann弁護士へのヒアリング等を通じて、国際法の実体面の研究としては、2012年に締結されたMinute 319により、アメリカのインフラの共同利用と環境影響緩和策が進展していることを確認した。 研究実績の概要において前述したとおり、国内法上の問題については、資源・エネルギー法全体に視野を広げ、水法内部でも資源配分だけではなく水質汚濁の問題を掘り下げたことによって、予想以上に手続面の研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、利水・環境の統合に災害法的観点を加えて、水法としての総合的な考察を深める。また、前年度に引き続き、水資源だけではなく資源・エネルギー法全般を比較対照として、実体面と手続面から国内法の比較研究と国際法の研究を進める予定である。 国内法・比較法(実体面)の研究として、水源地の土地利用と水資源(とりわけ地下水)及び生態系への影響に着目する。まず、国内については、十和田八幡平国立公園の隣接地域の水源地域において経済活動による地表水・地下水の水質への影響と法的対応について検討する。また、米国では、国立公園・国有林等の国有地においてシェールガス・シェールオイルの採掘が行われ、地下水への影響および生態系への影響が懸念されており、裁判例(Center for Biological Diversity v. BLM)の精査を進める予定である。 国内法・比較法(手続面)の研究として、日本の淀川水系流域委員会・滋賀県の流域治水等の成果及び米国のサクラメント・サンホアキン川流域における合意形成の進展を比較する。日本の取り組みについては、2015年3月の国際ワークショップ報告を論文として公表し、中華民国・国立高雄大学において、2015年6月に研究発表を行う予定である。また、日米の原子力法を比較対象として、Yucca Mountain訴訟のNevada州代理人を務めたAntonio Rossmann弁護士へのヒアリングを通じて手続面の検討を進め、国内の原子力法の意思決定手続を扱った2014年11月の法哲学会報告を論文として公表する予定である。 国内法・国際法の実体面・手続面に関わる課題として、国際河川・州際河川コロラド川の流域管理に注目し、2012年に締結されたMinute 319に基づくアメリカ・メキシコによるインフラの共同利用と環境影響緩和策の実効性を確認し、論文として公表する。
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Causes of Carryover |
当初は、海外からの研究者の招へいとリサーチアシスタントへの謝金として約40万円程度の支出を見込んでいた。しかし、海外旅費については、分担研究者として実施している他のプロジェクトの予算で賄うことができ、リサーチアシスタントへの謝金も学内の予算で賄うことができた。これらの予算を繰り越せば、海外調査の旅費や劣化したPCの更新にあて、より有意義な予算執行を行うことができるため、次年度に予算を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度には、繰り越した予算と新年度の予算を合わせて次のような計画でプロジェクトを実施する。まず、50万円程度を充てて関連書籍を収集し、文献調査を行う。また、日米の比較法および国際法に関する研究のために、文献調査を通じて生じた課題を明らかにするために、50万円程度を充てて、アメリカだけではなくヨーロッパににおいてもヒアリング調査及び現地調査を行う。そして、15万円程度を充てて国内のヒアリング調査・現地調査や研究発表を行う。さらに、25万円程度を充てて、劣化しているノート型PCを更新する。
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Research Products
(11 results)