2014 Fiscal Year Research-status Report
消費者取引における「適合性原則」の役割に関する比較法的研究
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25380134
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
王 冷然 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (70546639)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 適合性原則 / 投資者保護 / 消費者保護 / 合理的根拠適合性 / 損害賠償責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、投資取引領域に適用されている「適合性原則」が、消費者取引領域においていかなる適用可能性および役割を演じうるかを明らかにし、消費者保護法理および契約理論に対する影響を解明するものである。具体的には、「消費者」保護理論と「投資者」保護理論との相違を分析し、消費者取引における「適合性」の意味おw解明したうえで、消費者取引における「適合性原則」の果たせる機能を解析し、最終的に「適合性原則」の消費者保護法理および契約理論に対する影響を探求するものである。 今年度は、適合性原則の母国である米国において、2011年に改正された新しい適合性原則の内容や変更点を整理し、改正の目玉である「合理的根拠適合性」を中心にその意味および日本での理解に与えられうる示唆について研究し、その成果を公表した。 また、拙著『適合性原則と私法秩序』(信山社、2010年)が第1回津谷裕貴・消費者法学術実践賞を受賞したことを機に、シンポジウム「消費者法25年の歩みと今後の展望」において、適合性原則の現在と未来について講演をし、その成果を公表した。 さらに、第14回中日民商法学会において、日本の裁判実務における適合性原則の運用状況について、報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)最近実施されたEUの金融商品市場指令と、米国のドッド=フランク ウォール・ストリート改革および消費者保護法を中心に調べたところ、投資者を除き、消費者保護について適合性原則を定める規則がなかった。 (2)ヨーロッパおよび米国では、「適合性原則」が投資取引領域以外の消費者取引においてどのように利用されているかについて、文献を調べたところ、該当する研究が見つからなかった。 (3)中国や台湾の消費者保護法を調べたところ、同じく、適合性原則を利用して消費者を保護する規則がなかった。 以上の事情によって、当初予定した外国法の比較から消費者保護における適合性原則の役割を検討することが実現できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)諸外国において、消費者保護について直接「適合性原則」を利用していないが、「適合性原則」の趣旨を体現する下位準則の存否について、今一度精査する作業を行う。 (2)日本の消費者契約法の改正作業の動向を把握しながら、日本での議論を整理し、「適合性原則」が消費者取引領域おける役割を検討し、論文を作成する。
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Causes of Carryover |
注文した洋書は年度内に入荷できなかったことおよび参加予定の研究会に学内業務の都合で参加できなかったため、236,908円次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、書籍の購入および学会報告を予定しており、そのとき236.908円を一緒に書籍代と旅費として利用する。
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Research Products
(5 results)