2015 Fiscal Year Annual Research Report
現代韓国における戸主制の廃止と「性差」の法的構造の変容に関する実証的研究
Project/Area Number |
25380136
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
岡 克彦 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (90281774)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戸主制 / 儒教的家族 / 韓国民法 / 植民地法制 / ジェンダー法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、主に韓国において「戸主制」が法的にどのような機能を果たしてきたのか、という論点について一定の研究成果を上げるべく作業を行ってきた。日本の植民地時代にこの制度が導入されていく過程の解明から始まり、現代韓国の家族法制の展開および戸主制の廃止に至るまでの歴史的な観点から解明した。特に、本研究の特徴は、植民地時代の日本の家制度を戦後も再利用し、さらに、儒教的な父系血族たる「宗法制」と接合させながら近現代の家族制度として再編させた点を明らかにしたところである。本研究課題の新しい知見でもある。 韓国の戸主制が、伝統的な「古い」制度ではなく、宗族たる「血族」から分離して、戸主を中心とした小家族へと分化していった極めて近代的な家族制度であった。韓国でも産業化および都市化が進み、核家族を構成するようになっていった。それは同時に、血族内の結束が弛緩していく危険性を内包していた。ところが、戸主制に儒教的な家族イデオロギーを盛り込み、国家(法律)によりそれぞれの家族の構成を戸主を中心として再編成することで、核家族と宗族を架橋しつつ、戸主制はむしろ伝統的な血族の結束を強化する機能を果たした。本研究は、こうした戸主制の構造とメカニズムを法制度の観点から解明している。韓国は、戸主制を通して、権威主義体制への政治的正統性を国民から創出すると共に、経済的には国民の各資産を社会資本として集積させ、一定の経済発展に貢献してきた側面がある。 今後、本研究は、韓国で戸主制が廃止されて以降、男女の「性差」の法的構造がどのように変容しているのかを、トランスジェンダー問題を通して掘り下げていく予定である。
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