2014 Fiscal Year Research-status Report
大規模人災の損害論―福島第一原子力発電所事故とメキシコ湾原油流出事故を題材に
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25380138
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大坂 恵里 東洋大学, 法学部, 教授 (40364864)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 原子力損害 / 損害賠償 / 原子力損害の賠償に関する法律 / 民法 / 過失責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、福島第一原子力発電所事故とメキシコ湾原油流出事故という二つの大規模人災を題材に、有害物質への曝露による潜在的被害、自然資源の自家消費分の損害、環境損害など現行の法制度において評価することが難しい損害について研究を行い、どのように評価すべきか提言することにある。 平成26年度も、福島第一原子力発電所事故に関する研究が中心となってしまった。福島の現地視察に2回(原発を起点とすると、北部方面と南部方面で各一回)参加することで原子力損害の実態を知ることに努め、関連する研究会、シンポジウム、学会の部会において参加者と意見交換をしながら原子力損害賠償の法理論を検討することができた。とりわけ、日本環境会議の福島原発事故賠償問題研究会に参加することがかなったことで、研究者と実務家の枠を超え、かつ、学際的な視点で原子力損害を考えることができた。 具体的な研究成果としては、原発と人権全国研究・交流集会では日本語で、法と社会学会、国際社会学会、ヨーロッパ日本研究協会の各年次大会では英語で、福島原発事故の損害賠償問題について報告を行った。そして、「福島第一原子力発電所事故における東京電力の法的責任」と「原発災害と公害・環境法」というタイトルの論文を公表した。 有毒物質への曝露による潜在的被害については、福島第一原発事故直後の被ばくにより将来に不安を抱えたことについて原発ADRを通じた和解がもたらされているが、低線量被ばくの問題については既存の損害賠償法理でどのように考えていくべきか。さらに、ふるさと喪失損害の一部に含まれることになろう自然資源の自家消費分の損害や環境損害についても、メキシコ湾原油流出事故による損害と比較対照させながら、引き続き検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
福島第一原発事故に関する研究は、参加する研究グループの議論に触発されながら深化させることができたが、具体的な研究成果は損害論よりも責任論に関するものになってしまった。一方で、メキシコ湾原油流出事故に関する研究は、文献調査を含め、あまり進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるので、研究成果の総括を行うべく、福島第一原発事故に関する研究を引き続き行うことはもちろんであるが、メキシコ湾原油流出事故に関する研究を重点的に実施する所存である。後者について、具体的には、文献収集を充実させ、現地調査を行う。いずれの研究についても、損害論に比重を置くことを心がける。 研究成果については、平成27年度は、アメリカ法社会学会(ワシントン州シアトル、5月)と東アジア法社会学会議(東京、8月)で報告する予定である。そして、これらの報告内容を発展させ、論文として公表することを計画している。
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Research Products
(7 results)