2015 Fiscal Year Research-status Report
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25380144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
犬塚 元 東北大学, 法学研究科, 教授 (30313224)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 王党主義 / 君主主義 / 文明社会論 / 歴史叙述 / 啓蒙 / ハイド / ヒューム / 宗教対立 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 17世紀王党派から18世紀啓蒙に至る思想系譜を検証するのが本研究課題であるが、本年度は、17世紀におけるイングランド国教会の理論的活動に注目して分析を遂行した。その過程において、近刊の研究書(原田健二朗『ケンブリッジ・プラトン主義』創文社)の書評の形態において、ケンブリッジ・プラトン主義をめぐる研究動向や、ケンブリッジ・プラトン主義における宗教対立の克服という啓蒙的課題、をめぐって成果を発表した。
宗教改革以来の宗派対立・政治対立の克服、という実践的・理論的課題に対しては種々の対応がなされたが、そのうちのひとつとして、キリスト教の教義・制度の再定式というアプローチから対立の克服を試みた思想系譜が存在し、17世紀のケンブリッジ・プラトニストはその代表として位置づけられる。宗派対立・政治対立の克服、によってヨーロッパ思想史における啓蒙を定式化できるのであれば、ケンブリッジ・プラトン主義は、18世紀啓蒙と共通する実践的・理論的課題と格闘していた、ということになる。
2 17世紀王党派から18世紀啓蒙に至る歴史叙述の連続性・断絶、という研究テーマを解明するなかで、第一に、この分野の主導的研究者であるジョン・ポーコックの知的活動を包括的に再検討して、その思想史研究・政治理論研究の意義を確定した(単著論文「政治・多元性・批判的知性の擁護:歴史と歴史叙述をめぐるポーコックの思想史・理論研究 1957-2015」として2016年度に公刊予定)。第二に、18世紀啓蒙の歴史叙述のテクストのひとつを翻訳して公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、昨年度には、17世紀王党派の政治思想の分析をふまえて、研究論文「「文明化された君主政」論の王党派的起源」において、世俗側の国王支持派の言説や、それらと18世紀啓蒙との関連を分析したが、本年度は、宗教側(教会側)の国王支持派の言説や、18世紀啓蒙との関連を分析することができた。そのことを通じて、宗派対立・政治対立の克服、という理論的・実践的課題に対して、さまざまなヴァージョンの回答があり、通時的・共時的に多様な言説空間が存在したことが浮き彫りになった。第二に、ジョン・ポーコックの研究を検討するなかで、本研究課題の研究史上の位置づけや、本研究課題の政治理論的含意について理解の進捗が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度以降の3カ年間は、本研究課題においては後期に該当しており、王党派の君主政論の18世紀における受容を分析する応用のフェイスである。2015年度には、エドマンド・バークの歴史叙述について翻訳を発表することができたが、2016年度には、引き続きバークの政治思想(とくにその歴史叙述)に取り組んで分析成果を執筆・公表するほか、デイヴィッド・ヒュームについても分析をすすめ、単著執筆や、歴史叙述の翻訳をめぐる作業を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
2015年度は、本研究課題以外のエフォートによって在外での資料調査が不可能であったため、残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度予算と合算のうえで英国における資料調査を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)