2016 Fiscal Year Annual Research Report
New conflict in the reform of the welfare states: the social investment strategy and its alternatives
Project/Area Number |
25380150
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
田中 拓道 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20333586)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 福祉国家 / ワークフェア / 自由選択 / 政治的機会構造 / 社会運動 / 比較政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度であるため、これまでの研究を総合し、日本、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、スウェーデンの福祉国家の形成・変容を包括的に比較する単著『福祉政治史―格差に抗するデモクラシー』を執筆し、公刊した。この著作では、福祉国家の形成期に重要であった労使階級の権力関係に代わり、福祉国家再編期にはトップダウン型の政治過程を取るか、「新しい社会的リスク」にさらされたアウトサイダーを支援する社会運動との連携によるボトムアップ型の政治過程を取るかが、政策を分岐させることを明らかにした。これらの違いを「政治的機会構造」という概念を用いて比較検討し、今日では「ワークフェア」と「自由選択」という新たな対立軸が浮上していることを指摘した。アメリカに関しては、「政治的機会構造」の閉鎖化が極端に進み、「金融主導型レジーム」へと変容したものと位置づけた。日本に関しては、1994年以降の政治改革がレジーム再編のビジョンと結びついていなかったため、「ワークフェア」型の改革も「自由選択」型の改革も進展せず、レジーム再編が停滞したままであると分析した。 本研究によって、先進国が「ワークフェア」(公的社会支出を抑制しつつ、福祉の受給権と就労義務の結びつきを強め、人びとを就労へと強制する政策パッケージ)へと収斂しているわけではないこと、その背景にデモクラシーの形の違いがあることは明らかにしえたと考えられる。その一方で、いくつかの課題も残された。第一に、「自由選択」と称した政策群が家族政策、包摂政策など部分的なものにとどまり、一貫した政策パッケージとなっていないこと。第二に、もっとも重要な点として、現在のヨーロッパではEU統合強化か、国家主権強化・反移民か、という対立が浮上しているが、これらの動きを組み込んだ分析ができなかったことである。以上の点は次回の研究プロジェクトにおいて引き続き検討したい。
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