2013 Fiscal Year Research-status Report
首相の指導力に対する国会議事日程決定権限や首相の補佐体制の影響に関する実証的研究
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25380151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
竹中 治堅 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70313484)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 内閣 / 法案審議 / 議事日程権限 / 委員会 |
Research Abstract |
初年度は次の研究調査を行った。第一に議会における日英両国における内閣が有する議事日程に関する権限の違い、国会における法案審議のあり方の違い、国会の構造の違いを把握することに努めた。第二に、日本の首相補佐体制の変遷についての調査に着手した。特に、1955年体制後期における内閣官房のあり方について当事者の協力を得て、詳しい調査を行った。一方、イギリスについてはサッチャー内閣以降の首相補佐体制の変遷について調査を開始した。第三に、戦後日本の各内閣における主要な政策について研究を始めた。イギリスについてはサッチャー、メージャー、ブレア、ゴードン内閣における主要な政策を探った。 以上のうち、最も研究が進捗したのは第一の日英両国における内閣が有する議事日程に関する権限の違い、国会における法案審議のあり方の違い、国会の構造の違いを把握することであった。特にイギリスに出張し、複数の国会議員に聞き取りを行い、法案審議のあり方について詳しい知見を得ることが出来た。 具体的には次のことを明らかにできた。日本においては、内閣は審議する法案の優先順位、法案の審議時間を決定する権限を有していないのに対し、イギリスにおいては内閣が法案の優先順位を決定する権限を有しているほか、審議時間を設定する上でも強い影響力を行使できること。日本においては法案の優先順位や審議日程を決める上では議院運営委員会及び常任委員会の委員長及び理事、与野党の国会対策委員会が強い影響力を保持すること。日本では常任委員会が設けられているのに対し、イギリスでは委員会が法案ごとに設置され、委員会の与党委員の人選には内閣が強い影響力を保持すること。以上の違いのため、日本においては内閣が法案審議を促進し、法案成立を促すことが難しいのに対し、イギリスにおいては内閣が法案審議を迅速に進め、成立を促進することが容易なこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を行うにあたり、法案審議に関係する内閣と議会の権限の配分状況の把握はかなり困難であると予想していた。これは法案審議のあり方は一般的に複雑であり、明文化されず慣習によることも多いためである。特に、イギリスについては本研究では特に長期滞在をすることも予定しておらず、法案審議に関係する直接の関係者といかに接触するかが大きな課題であると考えていた。幸いなことにイギリスの複数の国会議員とコンタクトを得ることができ、イギリスの内閣と議会における法案審議に関係する権限の配分状況を把握する研究を進捗させることができた。これは次年度以降に本研究における分析の視座を作り上げる上でも意味のあることであった。 また日本における首相の補佐体制を把握する上で、文献調査によらず当事者の協力を得て調査を進めることが可能なのはもっとも遡って1980年代半ば以降であると考えていた。幸いにしてこれも可能となり、定性的な研究内容の充実につなげることができると考えている。かなり時間を要すると考えられた上記二つの課題を進展させることができたため、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本とイギリスの首相の補佐体制の変容について歴史的に把握する。日本については総理府および内閣府のあり方を探るとともに引き続き内閣官房の役割を研究する。一方、イギリスについては内閣府と首相府のあり方が変容する過程を理解することに務める。 また、引き続き日本の内閣の主要政策の調査を行う。また、イギリスについても戦後の内閣の主要政策の把握を続け、特にアトリー内閣からキャラハン内閣の政策についても把握することに努める。その際、日英両国において首相がみずからが重視する政策を立案、実現する過程について研究する。より具体的には、以下の事項を調査する。①いかに補佐体制を活用しようとしたのか。②いかに事前に与党の議員から支持を獲得しようとしたのか。③実際の法案の審議過程はどのようなものだったのか。この際、各内閣に関する先行研究を参照するとともに新聞記事、回顧録、国会議事録を活用する。また、可能な範囲で政治家や官僚に対しインタビューを実施する。 さらに分析枠組みの構築に着手する。構築にあたっては比較政治の関連分野における議論を参考にする。関連分野の先行研究を把握し、分析枠組みの構築に着手する。参考となるのは首相およびその補佐体制を総体として扱う考え方を提示した研究(Rhodes and Dunleavy, Prime Minister, Cabinet and Core Executive)、首相と他の政治アクターの関係を本人代理人関係で捉えた研究(Kaare, Muller and Bergman, Delegation and Accountability in Parliamentary Democracies)、政策立案者は政策を成立させる上で支持を獲得することが必要な政治アクターの考えを予め織り込んでいるという研究(Cameron, Veto Bargaining)である。
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Research Products
(1 results)