2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧口 剛 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10257959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 仁 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60171790)
森川 正則 奈良大学, 文学部, 講師 (70362598)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大阪財界 / 政治経済史 / 日本政治外交史 |
Research Abstract |
本科研の初年度である2013年度は、大阪財界の政治経済史に関連する調査・資料収集を行うと同時に研究会を開催して情報交換を行った。 調査としては、メンバーがそれぞれロンドン、天津、東京に出張し、関連資料を収集した。瀧口は、2014年3月15日~28日の間、ロンドンにある英国国立公文書館(The National Archives)にて、北京関税特別会議の資料を中心に、戦間期日英の通商経済交渉に関する調査を行った。田中は、9月2~5日の間、南開大学歴史学院(中国、天津)に出張し、資料収集と研究交流を行った。また10月13日広島中国近代史研究会例会に出席し、研究交流を行った。森川は、通商・関税政策をめぐる中央(東京)の政財界と大阪財界の相互関係を調べるため、2014年3月17日・18日に東京の国会図書館憲政資料室に出張し、主に「井上馨関係文書」「桂太郎関係文書」の調査を行った。また日本政治外交史、大阪財界の政治経済史に関する文献、資料を購入した。 研究会などによる情報交換、検討会は、大阪大学において年4回おこなった。研究会には関連するテーマで若手研究者を招き、久保田裕次「近代日本の対中国借款と国際借款団―第一次世界大戦期以前を中心に―」、村上友章「高碕達之助の共産圏外交」などの報告の検討を行った。なお村上氏には、2014年度から科研のメンバーに参加していただくことになった。また、2014年3月8日は、大阪大学中国文化フォーラムと共同でワークショップを開き、政治の方法論に関する検討を行った。 関連論文としては、瀧口剛「日英通商航海条約改定交渉と第1次世界大戦後の通商政策ーー自由通商と保護関税・特恵関税・満洲問題の交錯ーー 」阪大法学・第63巻第3・4号などを発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、近代日本政治史において経済都市・大阪が果たした役割を探求することを目的としている。日清戦争以降急速に経済発展をとげた大阪は、戦間期において工業生産高において東京を上まわる「大大阪」となった。戦間期以降自由主義経済、自由貿易、自治拡大を支持する傾向が強く、大陸とも密接な経済関係を持つ大阪財界は、しばしば中央の財界とは異なる政策指向を持った。他方において大阪財界は、政党内閣期、戦時、戦後のそれぞれの時期に政府と関係を持ち、しばしば影響力を行使した。本研究は、大阪(財界)と中央の政財界に対する対抗、協調、依存の関係の歴史的軌跡とそれが日本の政治経済に何をもたらしたのかについて探求することを企図している。 上記の研究を目的を達するため、調査資料収集、情報交換を行うことが出来た。 第1に初年度である2013年度には、大阪財界との関係の深かった英国、中国や東京に出張して、調査を行うことができた。特に大阪財界において関心の深かった中国の関税問題に関する調査を英国において行えたこと、東京出張において桂太郎文書、井上馨文書などは大きな成果である。これにより実証的研究の基盤が深まった。 また年4回の研究会において、報告と検討を行うことが出来た。特に日本と大陸との関係において大阪財界の果たした役割を高碕達之助の例をとおして検討できたことは、大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
大阪財界の近代日本政治経済史上の役割を探求するために、引き続き資料調査、収集を行うと同時に、研究会をひらいて情報交換を行う。 各分担者の研究推進方策は以下の通りである。瀧口は、昭和戦前期の大阪財界の役割に関する研究を進める。特に自由通商運動の役割に関する研究を進めるため、平生釟三郎や紡績業界の果たした役割に関する資料収集を行い、研究を進める。 田中は、1930年代上海の人名録の検討などから、大阪との関係の深さと大阪の在華紡をとおした日中関係の検討を行う。 森川は、国会図書館憲政資料室および関西圏の公立図書館・大学図書館での史料調査・収集活動を行う。その上で、明治末期から大正初期(第1次世界大戦期)にかけての大阪財界の政策志向と中央政府との関係性について、研究をすすめる。 また高碕達之助に関する研究を行っている村上友章氏を戦後大阪の政治経済史の担当者として加え、これにより戦後に関する研究をいっそう充実させる。
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