2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380161
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
和田 淳一郎 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (30244502)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 一票の平等 / 定数配分 / 公理化 / αダイバージェンス / 無知のヴェール / 分離可能指数 / 区割り / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、理論系の論文1本、実証系の論文1本の作成が行われている。 理論系の論文は、Apportionment Method from the Viewpoint of Divergenceと題して、αダイバージェンスを元に公理化を進めたものであり、6/14の日本経済学会(同志社大学)で報告し、フロアからの論文送付要請なども受けたことから、理論家には好意的に受け止められていると考えている。また同論文の数理的背景を成す情報幾何学の権威である数学者の先生からもご高評をいただいたことから、論理的な誤謬はないものと確信している。ただし、2/6のThe 11th Irvine-Japan Conference of Public Policyでの質疑応答からして、現実に政策に携わるようなタイプの研究者からは高評を得たとは言いづらいところもあった。 同conferenceに伴って機会を設けていただいた旧知の政治学者であるGrofman教授、Saari教授との研究交流から掴んだアイデアにより理論編の論文は大きく書き直すことができ、現在はApportionment behind the Veil of Ignoranceとして海外査読誌への投稿に至っている。これはMathematical Social Sciencesに掲載されたWada(2012)で残された課題を明確に解決した形にもなっており、単なる公理化を越えたと喜んでいる。 実証系の論文は、理論系の論文に基づいた国際比較を行っている。当初の論文はStudying unequal representation using alpha-divergence と題していたわけだが、これもIrvineでのGrofman教授との議論および最近得た共同研究者との議論からセールスポイントがはっきりしたことにより、改題の上3/13のPublic Choice Societyに臨み、更に5/17の選挙学会で報告することにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的研究は、その成功に保証がないことから、まずは実証的分析の準備を初年度の当初計画の中心においていたが、6/14の同志社大学における日本経済学会、2/6のThe 11th Irvine-Japan Conference of Public Policyおよびそれを機会に研究交流の場を設けていただいたGrofman教授、Saari教授との討論などから、一応の完成を見、海外査読誌に投稿できている。まだacceptには至っていないが、当初提出された研究計画・方法(概要)の中核部分である「具体的な“解”をORの力を借りて求め」のところは、3/24の日本OR学会「公共的社会システムとOR部会」にお招きいただいたことからも、それなりにお認めいただけるものになっていると考えている。 実証的論文は国際比較データに依拠しているわけで、データセットにその完成度が依拠するわけだが、3/13のPublic Choice Societyで報告を行い、5/17の日本選挙学会でも報告を行うことができるレベルにはなっている。Public Choice Societyでは、昨年の理論編のご理解をいただけなかった高名な研究者の方が肯きながら聞いて下さって上に、時間を守るゲルマン系の報告者が多いセッションだったせいか、時間が正確に残り、フロアからGrofman教授の応援演説までいただき嬉しかった。まだデータ的に不十分なところもあるわけだが、強力な共同研究者を得られたこともあり、最終年度に残した研究費による人海戦術で、行けるところまで行って論文という形にまとめたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的基礎付けを成す論文に関しては、一応の完成を見て、海外査読誌に投稿中であり、実証分析の論文はデータ等の整理収集で苦戦をしているが、強力な共同研究者を得たこともあり、今後は実証分析の論文に対して残る研究費を注ぎ込んで、今年度一気に結果を得ようと考えている。(国際比較データなので、適当な段階での論文作成を行いつつデータセット作成を行っているわけだが、時間と、人海戦術を支える研究費によるところもあるので、限界生産力は逓減せざるを得ないが、やれるところまで突き進めたいと考えている。) 数理的な学術論文としては一応の完成を見ている理論編ではあるが、2/6のThe 11th Irvine-Japan Conference of Public Policyでの現実政策にコミットされているようなタイプの先生方からのコメントが芳しくなかったこともあり、この先、一般社会への還元も考えていきたいと考えている。3次元空間に住む人間が慣れ親しんだ距離の概念が議席配分と区割りとの一貫性を破壊し、様々なパラドクスを引き起こす最大剰余方式をもたらすのに対し、αダイバージェンスを使った最適化は、様々なパラドクスを起こさず、現実社会でも使われている1+ドント方式(アダムス方式)、アメリカ下院方式、サン=ラグ方式、ドント方式などの除数方式を導き出すのにも関わらず、違和感をもたれるわけだが、数理的な基礎に基づいた上で、図解などの工夫を準備する必要もあるかと思われる。今年2月に選挙制度調査会がアダムス方式を提示したときのマスコミ一般の理解の足りなさを見ると、こういった仕事も付け加えられるべきかと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画では、研究の成否に不安が残る理論的研究を後に置いておりましたが、むしろ研究費が相対的にかからない理論的研究が先行、完成し、研究費が勝負にもなる実証的研究がその分遅れていることによります。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3年目は実証的研究のみに特化することになりますので、研究費が尽きるまで、国際比較に邁進したいと考えております。
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Research Products
(5 results)