2013 Fiscal Year Research-status Report
韓国の地域社会における市民事業の展開とローカル・ガバナンスに関する研究
Project/Area Number |
25380181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
文 京洙 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70230026)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ローカル・ガバナンス / CSR / 社会福祉協議会 / 社会的経済 |
Research Abstract |
2013年度は、文献収集・理論研究としては1)1990年代から「社会的企業育成法」の制定に至る韓国での市民社会の規範形成の過程についての調査、資料収集、2)英国を中心にヨーロッパでの社会的経済やローカル・ガバナンスの理論研究や実証研究の文献資料を収集し、比較ガバナンス研究の理論的基盤に構築に努めた。 3)フィールド調査を含む共同研究としては、今年度は、報告者が副センター長を務める立命館大学コリア研究センターと、韓国では社会的経済やCSRの研究の先端的研究所として知られるハンギョレ経済研究所とMOUを締結した。これに基づいて7月には李鉉淑ハンギョレ経済研究所所長、徐在教研究員、趙顯慶研究員などを京都に招き、京都のNGO施設への共同調査や共同研究会を開催した。さらに11月には、ソウル市が主催する国際社会的経済フォーラム(Global Social Economy Forum 2013)において共同のセッション「Breakout Session 16 営利と非営利の協力を通してみる社会的企業」をくんで参加した 4)これに加えて9月に済州社会福祉協議会(韓国済州市)を訪問し、日韓のローカル・ガバナンス分析の一つの要として両国の社会福祉協議会の比較検討の必要性に関する示唆を得た。 5)さらにフィールド調査としては、朴元淳市政の下で社会的経済や官民協力を前提としたまちづくりへの試みが進展する麻浦区のソンミサン・マウルを中心にすすめ、3月には、ソウル市まち共同体総合支援センターのユチャンボクセンター長、韓国まちづくり支援センター協議会のリュ・テヒ政策局長を招き、意見交換をするとともに、神戸(神戸大学大学院国際文化学研究科 異文化研究交流センター・メディア文化研究センター)、京都(Impact Hub Kyoto)、東京(世田谷トラストまちづくり)などを訪問し、研究会や意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会的経済やローカル・ガバナンスの理論研究や実証研究の文献資料の収集と、これらの文献の検討を通じて、日・韓・欧の各地での市民事業の展開状況、行政の役割や意思形成の特徴、ソーシャルキャピタルや住民自治の伝統、地場産業・金融の性格や役割などを踏まえ、ガバナンスの類型や発展のための条件について一定の理論的整理ができた。 さらに1990年代から「社会的企業育成法」の制定に至る市民社会の規範形成の過程についての資料収集・聞き取りができた。 フィールド調査では、今年度の調査地と予定していた清州市(忠清北道)、洪城郡(忠清南道)、完州郡(全羅北道)などは次年度とせざるを得なかったが、ハンギョレ経済研究所との共同研究を京都、ソウルの両地で実施できた。とくにソウル市が主催する国際社会的経済フォーラム(Global Social Economy Forum 2013)では韓国各地のまちづくりや社会的経済をめぐる実践が集中的に報告され、次年度以降の調査確定や調査のためのネットワークの形成に大いに役立った。 加えてフィールド調査の面では、韓国のハンギョレ経済研究所やソウル市まち共同体総合支援センターとの日本各地で共同調査が実施でき、次年度以降の研究の足がかりを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施予定であった清州市、洪城郡のフィールド調査を実施する。人口66 万5 千人余りの中堅都市・清州は、もともと経実連(経済正義実践連合)やYMCA、さらに女性人権センターなど穏健な市民団体による住民運動や慈善活動が盛んな地域であったが、社会的企業育成法の制定がこれらの団体組織のネットワーク形成に大いに貢献した。介護、移住女性支援などの社会的企業と地方行政、大学、雇用労働センター(雇用労働部の出先機関)などが緊密なネットワークをつくり、地域全体の持続可能な発展が模索されている地域であるが、同地の社会福祉協会の、こうした地域のネットワークのなかで果たす役割や地位に就いて検証する。 農村部の地域おこしで韓国でも最も注目されるのは、有機農業や自然エネルギーによる循環型のまちづくりを目指す洪城郡(忠清南道、人口9 万人弱)である。農業教育のフリースクール、生協、農協、信用組合、女性農業人権センター、自然エネルギー村(ムンダンリ)、都・農連携や帰農・移住を支援するハヌルマウルなどが住民主体のまちづくり・村おこしの先進的な事例を生み出している。こうした基盤のもとに高齢者による菓子づくりや若者のカフェなどの社会的企業としての起業も盛んであるが、社会的企業の成長やまちづくりをめぐるこの地域のガバナンスの特徴を、現地調査を通じて検証する。 以上2地域の調査と合わせて、ソウル・済州の地域調査、理論研究などを引き続き実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、韓国の研究機関の共同研究が計画以上に進展し、相手側の研究機関からの調査費用の支出があったこと、さらに、韓国での調査が回数としても期間としても計画より短く、共同による日本での調査が多かったため、旅費や、調査結果の翻訳などに用いる人件費などの費用支出が予定額より下回ったことが次年度使用額が生じた主たる理由である。 25年度に予定していて実施できなかった清州市や洪城郡の調査費用として支出すとともに、25年度に引き続いて、市民事業やローカルガバナンスに関わる文献資料の収集、調査結果の翻訳や整理、ソウル、済州での調査に使用する。また、やはり25年度に引き続き、ハンギョレ経済研究所やソウル市まち共同体総合支援センターとの共同研究や、日本での共同調査に使用する一方、新たに韓国聖公会大学社会的企業研究センターとの共同調査を計画している。 さらに、26年度は、日本・韓国以外のアジア諸国(スリランカで調整中)で市民事業やローカルガバナンスについての調査を検討している。
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