2015 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の地域社会における市民事業の展開とローカル・ガバナンスに関する研究
Project/Area Number |
25380181
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
文 京洙 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70230026)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ガバナンス / 韓国 / 社会的経済 / 社会的企業 / 市民事業 / 地域創造 / まちづくり / 協同組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会的企業など非営利・協同の市民事業の取り組みを、韓国の地域再生・創造の要として位置づけ、この市民事業をめぐる行政・市民団体・企業など、地域社会の多様なステークホルダー間の重層的かつ協調的なガバナンスの展開を実証的かつ理論的に解明することを目的としている。 平成27年度は、済州市・西帰浦市(済州特別自治道)、蔚山市、麻浦(ソウル)などでの資料蒐集、調査、市民事業関係者や行政担当者、さらに大学・研究機関の専門研究者との意見交換やインタビューを中心にすすめられた。これまでの調査や意見交換を踏まえ、今回の調査の焦点となったのは地域住民の起業努力に対する地方行政の支援の現状やその効果であったが、調査を通しておおむね以下のようなことが明らかとなった。 まず、市民事業が業種や地方行政の支援との関連では農村部と自治区を含む都市部とで業種や支援の態様が異なることが明らかとなった。すなわち、農村部では自治体が直接支援する戦略業種としては保育・教育が中心であるのに対して都市部では住居・福祉・環境などが中心であった。さらに販路開拓など自治体が間接的に支援する分野としては農村部では主に農漁業・観光、都市部では主として保健・医療、文化芸術分、流通・サービスなどが展開している。 「社会的企業育成法」制定以来、韓国での社会的経済は急速な成長を遂げたが、平成27年度の調査では、社会的企業の雇用者数やサービス受恵者の減少傾向が明らかになっている。このことは、社会的リスク構造解消に向けたガバナンスにおいて政府や自治体主導のこれまでの在り方が限界に達し、住民主導型のガバナンスモデルの開拓が切実に求められていることを物語っている。 さらに、社会的経済をめぐるそうした新たなガバナンスモデルの開拓との関連で、起業から成長・成熟にいたる段階毎の成長戦略の樹立が求められていることも平成27年度の明らかとなった。
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