2014 Fiscal Year Research-status Report
原子力政策の民主的コントロールに関する比較研究-中央ヨーロッパの諸国を中心に-
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25380184
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
東原 正明 福岡大学, 法学部, 准教授 (00433417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 宏 京都大学, 地域研究統合情報センター, 助教 (60312336)
小野 一 工学院大学, 工学部, 准教授 (80306894)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子力政策 / 脱原発 / 中央ヨーロッパ / 比較政治学 / ドイツ / オーストリア / チェコ / スロヴァキア |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、研究分担者がそれぞれのテーマに則して研究を遂行するとともに、随時研究会を開催した。また、国内・海外において現地調査を行った。 各研究分担者は、研究分担に従って文献の収集と調査研究を行った。小野は、著書『緑の党/運動・思想・政党の歴史』(講談社選書メチエ、 2014年)等で、ドイツの原子力政策等について検討し、緑の党を含めた左翼政党の動向に関して考察・整理した。福田は、学会報告「『東欧革命』への『長い』軌跡:『正常化』時代における非言語的象徴の機能」(比較政治学会、2014年6月28日) で「東欧革命」までの過程を分析し、現在の原子力政策決定に至る基盤を検討するなどした。東原は、「翻訳・紹介 オーストリア自由党(FPOe)綱領」(福岡大学『法学論叢』第60巻第1号、2015年6月(予定))で極右政党FPOeの政策を原子力政策も含め翻訳するなど、オーストリア政治の現状を分析した。 現地調査のうち海外調査(9月)はドイツで小野と東原が実施し、文献調査や環境団体、研究機関への聞き取り調査を行った。また、東原はオーストリアで反原発運動関係者への聞き取り調査や資料収集を行った。福田は、チェコで文献調査等を行った。国内調査(2月)では、福井県敦賀市及び若狭湾沿岸地域の原発や関連施設を訪問した。原発問題に詳しいゲストスピーカーの参加も得て、敦賀市議や反原発運動関係者、日本原子力発電敦賀発電所に対して聞き取り調査した。 研究会は上記調査に付随して実施した。第一回研究会(プラハ、9月)では現地調査の成果をふまえて意見交換した。第二回研究会(敦賀、2月)では当該調査についてのほか、最終年度に向けた取り組みに関しても意見交換した。 また、小野と東原は7月に日本自治学会シンポジウム「原発と自治」、11月に日本平和学会部会2「フクシマの意味と日本の選択」に参加し、原子力政策と地方自治の関連について重要性な示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目となる2014年度は、初年度に引き続き各研究分担者がそれぞれの研究分担に従って文献の収集と調査研究を行った。小野は、発表した著書や論文によって、ドイツの原子力政策に対する緑の党を含めた左翼政党の影響についても明らかにしてきた。福田は、学会報告を通じて東欧諸国の状況を分析するなど、チェコやスロヴァキアの原子力政策の分析へ向けて必要な基盤となる研究を継続している。東原も、基礎的研究としてオーストリア現代政治について整理したほか、発表予定の翻訳を通じ、個別の政党の政策にも検討の対象を広げている。これらをふまえ、両者はそれぞれの研究対象国の原子力政策に関する論文の執筆準備を進めている。 さらに海外調査では、資料収集はもちろんのこと、各地の環境団体関係者等との間で幅広く意見交換し、人脈を拡大することもできた。この調査を通じて文献調査を補う様々な情報を得られたことは、本共同研究にとって意義がある。また、ヨーロッパを研究対象として本共同研究を遂行するとしても、日本国内の実態は必ずふまえておかなければならないと考えられることから、国内調査を実施した。この調査によって、最終的に本共同研究の成果を社会に還元する際に念頭に置くべき必要な前提として、日本の状況を確認することができた。国内外での調査を通じて、本共同研究を海外事例の比較研究にとどめるのではなく、地方自治とも関連させて原子力政策を研究するという今後の発展可能性を確認した。 第一回研究会は海外調査に伴って実施し、ヨーロッパでの調査をふまえて、今後の本共同研究の進め方につき確認することができた。第二回研究会は国内調査に付随して行うことで、本共同研究の成果を社会にいかに還元するか、その方法を検討するとともに、各研究分担者が研究を遂行する際の前提を共有することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、3年計画で進められる本共同研究の最終年度であり、研究の取りまとめを行うこととなる。 過去2年間に行われた各研究分担者の研究及び海外調査を通じて、IAEA(在ウィーン)などの機関への聞き取り調査の準備を進めることができた。本海外調査には、可能であれば調査対象機関にEURATOMなどを加え、原則として全員で実施する予定である。なお、各研究分担者が資料等を追加的に収集する必要性が生じる可能性もある。その場合には本海外調査の際に、各研究分担者が研究対象としている国での調査(エネルギー所管官庁、政党、報道機関、研究所などを対象)を各自行うことも想定される。出張可能時期などの時間的制約もあることから、効率性という点を考慮して、全研究分担者合同での調査と各自の海外調査は同時に行うこともあり得る。 研究会は年三回程度予定し、意見交換と研究成果の公表に向けた調整の場として有効に活用したい。また、研究成果公表に向けて、本共同研究の内容を多面的に検証し、その深化・豊富化に資することを念頭に、ゲストスピーカーを招くことも検討したい。 これらの研究活動に基づいて、各研究分担者は論文執筆を進める。完成したものから随時公表し、学術的に貢献することとしたい。また、本年度も研究成果を研究報告という形で広く社会に発信するなどの活動にも取り組みたい。個別の研究会での報告はもちろんのこと、研究分担者が所属する学会(日本政治学会、日本比較政治学会等)での報告の機会を得られるよう努力したい。そして、本年度は最終年度であることから、地域研究コンソーシアム(京都大学地域研究統合情報センター)発行の学術雑誌『地域研究』にて特集企画を提案し、個別報告ではなくそれぞれの相関関係をふまえつつ発表することを計画している。また、重要な論文については著書などの形で出版物として刊行することも目指したい。
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Causes of Carryover |
研究代表者である東原が所属する福岡大学では、科研費を交付されている研究代表者が応募可能な学内の競争的研究資金がある。東原は2013年度にこれに応募し、2014年度は3年計画の2年目としてこの資金を受けることができた。本科研に関連した国内出張や文献購入の費用にこの資金を充てることができたことが、東原に次年度使用額が生じた最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度に生じた次年度使用額は約2万3千円程度であり、文献等の購入などで有効に活用したい。あるいは、年三回程度予定している研究会に、可能であればゲストスピーカーを招く際の資金として使用することも検討したい。
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