2013 Fiscal Year Research-status Report
中国と台湾の義務教育における日本認識に関する比較研究―教育政策と教科書を実証分析
Project/Area Number |
25380187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王 雪萍 東京大学, 教養学部, 准教授 (10439234)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国 / 台湾 / 歴史教育 / 教科書 / 日本イメージ / 教育政策 / 日中関係 / 日台関係 |
Research Abstract |
本研究は、中華人民共和国(以下:中国)と台湾の義務教育課程で、小中学生に教えられた日本像を解明することを目的としている。1949年建国後の中国の教育は、台湾へ移った中華民国とソ連の影響を強く受けていた。また冷戦構造下で中国と台湾が長期的に対峙していたため、香港や海外の華僑学校の教育は、中国や台湾の教育の影響を長年受けてきた。そこで、本研究は中国と台湾の義務教育課程における日本像の類似点と相違点を分析し、近年、より複雑化している中国人(中国大陸、台湾、香港、海外在住の中国系住民)の対日イメージの構造的特徴を明らかにしたい。 研究方法として、中国と台湾の歴史、社会、国語、政治、地理など科目の「教学大綱」(中国の学習指導要領、2001年から「課程標準」と改称)、「課程標準」(台湾の学習指導要領)と教科書の記述内容、記述字数データの変化を中心に分析している。 2013年度の調査は、資料の収集と整理を重点的に行い、1949年から2008年までに中国と台湾政府が公表した「教学大綱」、「課程標準」、および北京の人民教育出版社、上海の華東師範大学、上海師範大学と台湾の国立編訳館で出版された教科書を収集し、データベース化の作業を続けている。現段階調査の結果は以下の通りである。 1949年の建国から2008年までの間に、中国と台湾の教科書はともに、時代の変化によって、量的にも内容的にも変化が見られた。中国では、このような「時代性」はより強く、国の政策がより早く教科書に反映される傾向がある。台湾では、政策の変化による記述の内容の変化は大きくないが、長期的には若干の変化がみられた。比較の視点で、上海市に独自に出版された歴史教科書についても分析した。上海の歴史教育は、グローバル化の発展に応じて、また中国政府の新課程改革に従い、新しい形の歴史教科書を編集、出版したことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は以下の通り、資料調査とデータベース作成を中心に研究を進み、聞き取り調査の準備もした。 教科書資料調査:2013年度では、北京、上海と台北の研究協力者を中心に、1949年以降出版された小中高学校の歴史(北京35冊、上海24冊、台湾28冊)、社会(北京16冊、上海8冊、台湾12冊)、政治(北京56冊)、国語(北京64冊、台北26冊)の教科書を入手し、現在データベース化の作業をしながら、内容分析を行っている。 「教学大綱」、「課程標準」に関する資料調査:中国の歴史科の「教学大綱」について、本研究開始前にすでに入手したので、2013年度では、公刊した1949年から2000年までの中国の社会科、国語科の「教学大綱」と中国政府が制定された「課程教育計画」、台湾政府教育部に制定された歴史科、社会科、国語科の「課程標準」の一部を入手し、分析を行っている。 インタビュー調査:2013年度は主に資料調査を中心に行っていたため、中国と台湾の政府担当者へのインタビュー調査について、中国大陸の「課程標準」作成担当者の1名のみにインタビュー調査を実施した。主に2014年度に実施する予定の中国大陸と台湾で行われるインタビュー調査の準備のため、各時期の「教学大綱」と「課程標準」作成者の特定、連絡を取ることを中心に行った。 資料調査について、日中関係の悪化により、中国の一部の資料館へのアクセスが制限されたため、予定した資料収集はすべて完了しなかったが、台湾での調査は予定より多くの資料の収集ができた。また「教学大綱」と「課程標準」に関する資料調査も予定より多く順調に進められた。インタビュー調査に関しても、中国政府の教育政策決定プロセスについての予備調査が実現でき、インタビュー調査対象との連絡も順調に進めている。以上の状況から、2013年度の研究実施状況はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度には資料調査以外に、データ分析、事例研究、聞き取り、アンケート調査をも重点に置かれることから、データベース作成、聞き取り調査テープ起こしの業務担当の研究補助者1名を追加し、研究代表者と共に、初年度に収集した調査資料の分析をおこなう。調査資料分析班の統計データおよび、資料分析を通じて、追加調査の必要に応じて資料調査と聞き取り調査、アンケート調査を実施する。 2015年度は、データ分析、調査結果のまとめ、シンポジウムの開催に重点を置かれるため、シンポジウム準備関連業務担当の大学院生1名を追加する。年度の前半では、2013-2014年度に集めた資料に関する統計データの整理を中心に行い、必要に応じて、追加調査を行う。年度の後半(2015年11月を予定)に東洋大学白山キャンパスにてシンポジウムを開催し、本研究の調査活動、データ分析の結果および事例研究の内容の分析について報告し、討議をおこなう。またそこに現れる問題点を整理し、その後の研究活動の必要性、可能性についてもあわせて話し合う。シンポジウムでは、本研究の構成員だけではなく、一般聴衆にも参加していただき、本研究の研究成果に対する意見も広く求める予定である。このほか研究成果の公刊の準備を開始する(2016年度に刊行予定)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年9月に資料収集とインタビュー調査の予備調査のための北京への出張は、研究協力者の都合により、中止となったため、その分の出張費用が支出できなく、次年度に支出することになった。 2014年9月10~16日、中国への調査出張費、146613円
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Research Products
(13 results)