2014 Fiscal Year Research-status Report
中国と台湾の義務教育における日本認識に関する比較研究―教育政策と教科書を実証分析
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25380187
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
王 雪萍 東洋大学, 社会学部, 准教授 (10439234)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国 / 台湾 / 日本 / 歴史認識 / 教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
2012年の中国各地における「反日」デモの発生並びにデモの派生的な影響により、日中関係は新しい局面を迎えた。「反日」デモの背景には、日中両国の歴史認識問題が存在している。日中間で1931年から1945年まで続いた悲惨な戦争は歴史の重要な一部分である。その時期の史実を解明することは重要な課題ではあろう。同時に、戦後産まれの日中両国民が、過去の戦争の歴史をどのように認識しているのか、これが日中関係の改善に向けた重要な鍵になると考えられる。そこで本研究は、これらの「課程標準」、「教学大綱」と教科書における日本記述の変遷を抽出し、1949年以来、中国大陸と台湾の教科書に記述された日本像について検討するものである。 現段階調査の結果は以下の通りである。中国の歴史教科書の全文字数から見る日本記述及び近代日本戦争の割合は文革後に一貫して下がっている。とりわけ、1990年代以降の教科書の総文字数が増え、その結果として日本に関する記述の文字数も増えたとはいえ、全体の中での割合が下がってきている。特に、日本を含む、外国からの侵略を強調する姿勢は、2001年以降では緩和され、抗日戦争時の日本軍の残酷な侵略行為をはじめとする列強からの侵略行為全般に関する紹介が大幅に減少し、グローバル化の流れの中での外国との共存・協調姿勢を示した。 また、対日イメージが良好であると言われてきた台湾の教科書ではどのように日中戦争を記述したのか。台湾の教科書における日本関連記述は中国大陸と同じく近代日本による中国を中心としたアジア太平洋地域に対する侵略と抗日が中心となっている。このような傾向は1949年に国民党政府が台湾に撤退したときから、現在まで変わりがないが、時代の変遷にともなって、記述にも若干の変化もあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は以下の通り、収集した資料のデータベース作成と分析を中心に研究を進み、資料の追加調査と聞き取り調査も行った。 教科書資料調査:2014年度では、台湾における資料収集を中心に行い、2013年度の調査の下に国立編輯館にて過去に公開された教科書の複写作業を行った。おもに歴史(32冊)、社会(8冊)、国語(36冊)の教科書を入手した。中国では、2013年度調査の上、現地の協力者の協力を得て、思想政治(6冊)、歴史(5冊)、政治(6冊)、国語(6冊)の協力を入手した。現在の作業をしながら、内容分析を行っている。 「教学大綱」、「課程標準」に関する資料調査:2013年度では本研究関連科目の中国の「教学大綱」と「課程標準」をほぼ入手したため、2014年度は台湾の「課程標準」を中心に調査した。国立編輯館に保存された1949年以降の「課程標準」を複写する以外、国史舘に保存された教科書編集関連档案を収集し、台湾の教科書編集の関連政策の政策過程に対する分析を行っている。 資料のデータベース作成、分析:2013~2014年度に収集した教科書のうちの半分程度について、研究協力者の学生の協力を得て、字数統計を完了している。特に上海市独自出版された歴史教科書と人民教育出版社の高校歴史教科書の字数統計を完了し、それに対する分析も進めている。台湾やほかの地域で収集した歴史教科書及びその他の科目(社会、思想政治、国語)の教科書のデータベース化と統計作業を行っている。 以上の状況から、2014年度の研究実施状況はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、データ分析、調査結果のまとめを中心に行い、昨年度完了しなかった追加調査も行う予定である。年度の前半では、2013-2014年度に集めた資料に関する統計データの整理を中心に行い、7月下旬に中国の北京へ追加調査を行う予定である。年度の後半に研究報告会を開催し、本研究の調査活動、データ分析の結果および事例研究の内容の分析について報告し、討議をおこなう。またそこに現れる問題点を整理し、その後の研究活動の必要性、可能性についてもあわせて話し合う。シンポジウムでは、本研究の構成員だけではなく、一般聴衆にも参加していただき、本研究の研究成果に対する意見も広く求める予定である。このほか研究成果の公刊の準備を開始する(2016年度に刊行予定)。
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Causes of Carryover |
2015年2月に資料収集とインタビュー調査のための台湾への出張は、諸事情で中止となったため、その分の出張費用を支出できなく、次年度に支出することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年9月7~16日、台湾への調査出張、245000円
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Research Products
(12 results)