2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国と台湾の義務教育における日本認識に関する比較研究―教育政策と教科書を実証分析
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25380187
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
王 雪萍 東洋大学, 社会学部, 准教授 (10439234)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歴史教育 / 教科書 / 中国 / 台湾 / 上海 / 歴史認識 / 戦後処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国と台湾の義務教育課程で、小中高学生に教えられた日本像を解明することを目的としている。25年度と26年度では、主に1949年~2008年までの中国と台湾の教科書や教育課程における日本記述や教育方法を分析した。特に、中国において、国定教科書の性格が強い人民教育出版社の歴史科、国語科、社会科の教科書を中心に分析した。今年度は比較の視点を持って、1995年から2009年までの間、上海市で出版された歴史教科書における日本記述について、人民教育出版社の教科書との比較の視点を用いて分析を行い、2000年代以降の中国の歴史教育改革と日本イメージ構成の関係性を明らかにした。 結果、上海独自の三つの高校歴史教科書についての比較分析を通じて、上海の歴史教育改革がグローバル化の発展に応じて、さらには中国政府の新課程改革に沿おうとしたこと、蘇智良のチームによって新しい形の歴史教科書を編集、出版されたことを確認した。蘇版高校歴史教科書は、中学校の歴史教育との連動性を重視し、重複を省く一方、全世界範囲での文化史、文明史、経済史、宗教史と世界近現代史を中心に編集された。国家史に関する紹介は、中国と六つの先進国以外は基本的に世界全体の発展の流れのなかでとりあげられ、全世界の総合的な歴史の一部として説明された。それによって、日本に関する記述の量が著しく減少しただけではなく、戦後処理のためのサンフランシスコ講和会議など、それまでに中国の学生に詳しく紹介されなかった戦後日本の情況も学生に教育し始めたことが分かった。また、上海の教科書改革は上海だけの独自な改革ではなく、中国の中央政府による教育改革と合致しており、さらに、蘇智良版教科書と編集方針が類似する人民教育出版社版の高校歴史教科書がすでに全国で使用されていることは、中国の高校歴史教育改革は中国全国の高校生の日本イメージの改善に寄与すると考えられる。
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