2013 Fiscal Year Research-status Report
東アジア冷戦体制の「熔解」と持続の狭間で:韓国の「脱冷戦」外交に焦点を当てて
Project/Area Number |
25380188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木宮 正史 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (30221922)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 朝鮮半島 / 韓国 / 北朝鮮 / 冷戦 / デタント / 北方外交 / 対共産圏外交 / 二つのコリア |
Research Abstract |
平成25年度に関しては、主として、1970年代末から80年代初頭、具体的には83年までの韓国外交文書を分析することに注力した。さらに、日米韓3カ国で展開されている、1970年代から80年代にかけての、所謂デタント期における冷戦史研究、国際政治史研究を先行研究として参照することを試みた。特に、この分野においては、ヨーロッパにおける冷戦史デタント研究が先行している状況なので、当該分野における日米欧の先行研究を読み込むことを行った。 そのうえで、従来収集した1982年までの韓国外交文書を、特に、韓国の対共産圏外交および対第三世界外交を中心として分析することを通して、それまで冷戦体制に制約されていた韓国外交が、1970年代末後半から80年代にかけて、いかに韓国なりの方法によって、冷戦から脱する方向性を指向したのかを明らかにした。一方で、国際社会に対しては韓国と北朝鮮という「二つのコリア」が存在するということを前提とした外交に舵を切り、それに応じて積極的に対共産圏外交および対第三世界外交を指向したことを解明した。他方で、北朝鮮との平和共存を模索するという方向性は部分的には南北対話の模索などによって実現されたものの、結局は、北朝鮮が韓国を迂回した米朝二者間交渉を優先させるのではないかという疑心を払拭することができず、南北関係改善にはそれほどの進展が見られなかったという、ある種の逆説を明らかにすることにも成功した。 さらに、平成26年3月末には、新たに機密解除された1983年の韓国外交文書を閲覧複写することを通して、今後、1980年代に入ってから本格的に展開されることになる、全斗煥政権による北方外交の端緒を一次史料を通して解明する作業に取り組んでいる。但し、この作業については、韓国外交文書の公開時期が年度末にずれ込んだこともあり、今現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来収集した日米韓3カ国の外交文書を使いやすいように整理しながら分析する作業を続けてきた。特に、最も力を入れている韓国外交文書に関しては、1970年代から83年にかけての外交文書をほぼ網羅的に収集することに成功し、そうした豊富な資料に基づいて、従来までの「冷戦体制に制約された韓国外交」という韓国外交に対する既存イメージを相当程度打破することに成功し、1970年代のデタント期の冷戦史研究において、従来の欧米中心の研究からの脱皮を図ろうとしている。 そして、そのためにも、飛躍的な速度で進んでいる、欧米地域を主たる対象とした1970年代デタント期の冷戦史研究の研究成果を、その一次史料も含めて読み込んできたが、一方で、特に西ドイツの東方外交などに関する研究を通して、それと韓国外交との異同を明らかにするのみならず、韓国政府が部分的にではあるが、西ドイツの東方外交を「学習」していたことを明らかにすることにより、両者の比較のみならず両者の関係性も明らかにすることができた。 しかし、1983年の韓国外交文書は2014年3月末の年度末に機密解除されたため、本来であれば、平成25年度中に分析作業を終える予定であったが、この文書の分析作業が平成26年度にずれこんでしまったと言う点は当初の計画から若干遅れている部分である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、1983年分の韓国外交文書の分析作業に取り組む。特に、この年は、大韓航空機をソ連軍が撃墜した事件やビルマ訪問中の韓国の全斗煥大統領一行に対する北朝鮮によるテロ事件があったように、地域における緊張が激化した時期である。したがって、この分野における外交文書、特に、韓国の対共産圏外交、対第三世界外交に関する外交文書を読み込むことによって、それまでの韓国外交にどのような点で変化が見られたのか、さらに、どのような一貫性をもって取り組まれたのかを明らかにすることができるはずである。 第二に、1970年代後半以降、新たに公開されつつある米国外交文書に関しても、米国の国立公文書館およびカーター大統領、レーガン大統領図書館を訪問し、資料を閲覧することによって、米国国務省および大統領府が、どのような対朝鮮半島政策、対東アジア政策を展開したのかを明らかにすることを試みる。米国外交文書に関しては長らく資料の公開が止まっていたが、昨年来、新たな史料公開が進み始めているという情報を得ているので、直接訪問することによって、新たな資料に接し、米国と朝鮮半島との関係について、米韓双方の外交文書から、その実態を明らかにすることを試みる。 第三に、史料公開に関しては、若干後塵を拝す日本ではあるが、日本外交文書に関しても1970年代の文書公開が散見されるようになっているので、日本の外交文書からも、1970年代の朝鮮半島をめぐる国際政治の歴史的展開を読み解く作業を試みるつもりである。 以上のように、多国間のアーカイブに対するアプローチを通して、朝鮮半島を中心とした、日本を取り巻く東アジアの国際政治の歴史的展開を、理論的かつ実証的に明らかにする作業に取り組む。
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Research Products
(10 results)