2016 Fiscal Year Research-status Report
国連システムにおけるアカウンタビリティー向上の取り組みと管理型概念の解明
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25380194
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蓮生 郁代 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80509597)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際行政 / アカウンタビリティー / 国連システム / ユネスコ / 結果志向型管理方式 / 業務監査 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年に引き続き、現在進行中の国連システムの行政改革の問題点を明らかにするために、実証分析を継続した。これまで研究開始初年度においては、グローバルレベルでの取り組みを理解するために、国連システム全体での行政統制改革の現状を調査した。そして研究開始2年目以降においては、ユネスコを事例研究の対象として取り上げ、焦点を絞っていった。まず2年目には、国内における文献調査や資料収集を中心に行った。次に3年目以降は、アメリカのユネスコへの分担金拒否とそれによって引き起こされたユネスコの財政危機の深刻化の問題を取り上げ、その影響を探った。昨年度(平成28年度)は、ユネスコ関係者へのヒアリングを国内で行った。
昨年度には、ヒアリング調査の成果の公表として、大阪大学に前ユネスコ事務局長である松浦晃一郎氏を招へいし、大学外部にも開かれた講演会を実施し、アメリカにおけるトランプ新政権の誕生と、それに伴うアメリカの多国間外交やユネスコ政策への影響に関しても議論を深めた。
また、上記テーマと同時並行的に、「国連のアカウンタビリティー強化」に関する単著の準備の一環として、昨年度は、同単著全体を通して用いられるべき分析枠組みに関する理論的研究の準備を進めた。具体的には、国連の安全保障理事会による権力の濫用を阻止するためのアカウンタビリティー・メカニズムに関する理論研究を進めた。そして、その成果を2016年10月、日本国際政治学会編の『国際政治』第185号に投稿し、「国連安保理改革とアカウンタビリティーの概念の歴史的変容―プラグマティックな多元的統制メカニズムの構築へ―」と題する査読論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始4年目ということもあり、事例研究として選択したユネスコに関しては、引き続き元ユネスコ高官などへの国内でのヒアリングなどを中心に実証研究を進めた。
一方、国連(全体)のアカウンタビリティーに関する研究のほうも同時進行的に進めなければならなかったため、ユネスコに関する実証的研究から得られた観察の結果の理論的まとめなどに十分な時間が割けなかった。
査読論文の公表という一つの大きな目標は達成できたが、他のフィールドワーク(例:スイスのジュネーブにある国連システム合同監査団でのヒアリング等)等は、先方の都合もあり、昨年度も実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、国連システム全体の監査制度改革に関する全体像の実証的把握のため、スイスのジュネーブにある国連システム合同監査団での資料収集やヒアリング調査等を実施したい。
次に、パレスチナのユネスコ加盟問題を機に、アメリカがユネスコの分担金支払い拒否を継続しており、ユネスコの財政危機は深刻化している現状と問題点の分析を継続して行う。同時に、財政危機が深刻化する中、ユネスコの行財政改革はどのように進められるべきかに関しても、引き続き実証的な調査・分析を継続して行う。その上で、それらの観察の結果から、なんらかの理論的推論を導くことが可能か分析を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
ヒアリング実施のため、スイスのジュネーブにある国連システム合同監査団への出張を見込んでいたが、先方の都合が合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にスイスのジュネーブにある国連システム合同監査団を訪れ、ヒアリングを実施したい。
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Research Products
(2 results)