2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長澤 裕子 東京大学, 総合文化研究科, 講師 (90626730)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 朝鮮文化財 / 文化財返還 / 略奪文化財 / 日韓分離 / 日米韓関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国文化財返還問題に関して、日本・韓国・米国・英国の一次資料調査を行った。主に、1945年から1970年代にかけての韓国文化財返還運動と国際環境の変化を中心に、返還請求および返還の実例について研究した。先行研究では、朝鮮半島での文化財返還運動が1945年に震檀学会によって行われたという点のみが知られていたが、本研究活動を通じて、震檀学会および駐韓米軍の文化財および博物館設立を担当したクネズ文書といった一次資料を発掘できた。その結果、次の点が明らかになった。1)震檀学会の特定メンバーが、古書籍を中心に返還リストを作成し、駐韓米軍に対して請求活動を行ったこと、2)駐韓米軍がSCAPに対して日本政府に返還を働きかけるよう進言していたこと、3)SCAPでは、日韓分離政策や米国本国の日本専門家の意見に基づき、日本の返還義務がないこと、4)日本が朝鮮文化財を返還することにより、日本の博物館展示に支障が支障が生じると反対していたことがわかった。併せて、英国における調査で、1970年代以降、略奪文化財に対する博物館の認識および運営方針が変化し、美術品の購入時に略奪文化財をチェックする部局を置いていること、昨今では、中国略奪文化財に関する国際共同研究を実施していることもわかった。研究結果は、日本および韓国の学会で発表したり、日本の地方自治体の朝鮮文化財の関連部局に情報を提供した。合わせて、今後の課題として、新たなプロジェクトを申請し、文化遺産のプロジェクトとして採用された。
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