2015 Fiscal Year Research-status Report
経済環境におけるメカニズム・デザインの可能性と限界
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25380218
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大瀬戸 真次 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00278475)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メカニズム・デザイン / 相互評価 / 表彰制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
メカニズム・デザインの新しい問題である「相互評価による表彰制度の設計」に関する研究を引き続き遂行した。相互評価とはある集団における個人相互を評価し合う状況であり、表彰制度はその相互評価に基づいて各個人にランキングをつけたり、一人または集団の一部を表彰対象者として選択する仕組みのことである。平成27年度の研究では、相互評価の情報的基礎として、次の2つの枠組みを採用して研究を行った。第一は、安藤・小原・山本(2003)と大瀬戸(2007)で採用された「すべての個人に(序数的)ランキングをつけ、社会的なランキングを集計する関数」を分析する枠組みである。安藤・小原・山本(2003)は、弱パレート原理の他に、無関係対象からの独立性を課し、不可能性定理を得た。一方、大瀬戸(2007)は、弱パレート原理のみを採用し、ボルダ・ルールが弱パレート原理を満たす唯一のスコアリング・ルールであることを証明した。平成27年度の研究では、スコアリング・ルールに限定せずに弱パレート原理を満たすルールをいくつか発見し、一般的な特徴付けに繋がる初歩的な結果を得た。第二は、田村・大瀬戸(2014)で採用された「すべての個人は他の一名を指名し、それを集計し複数の表彰対象者を決定する関数」を分析する枠組みである。田村・大瀬戸(2014)では、不偏性、正の全員一致性、匿名性を満たすルールが存在しないという不可能性定理を証明した。平成27年度の研究では、正の全員一致性を要求せずに、不偏性と匿名性を満たすいくつかのルールを発見し、一般的な特徴付けに繋がる手掛かりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メカニズム・デザインの新しい問題である「相互評価による表彰制度の設計」に関する研究を引き続き行い、表彰制度の設計に関する過去のいくつかの論文を丹念に再検討することにより、いくつかの初歩的な結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
メカニズム・デザインの新しい問題である「相互評価による表彰制度の設計」に関する平成25-27年度の研究を進展させ、相互評価の情報的基礎に応じた新しい表彰制度を設計してその性質を分析する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成28年度請求額とあわせ、平成28年度の研究遂行に使用する予定である。
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