2016 Fiscal Year Annual Research Report
経済環境におけるメカニズム・デザインの可能性と限界
Project/Area Number |
25380218
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大瀬戸 真次 東北大学, 経済学研究科, 教授 (00278475)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メカニズム・デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
経済環境におけるメカニズム・デザインの研究を行った。メカニズム・デザインとは、社会を構成する個人の戦略的行動を考慮に入れた上で、社会や経済における目標を達成するためのメカニズム(制度)を設計する研究分野である。経済環境におけるメカニズム・デザインの研究対象として、純粋交換経済、公共財供給、非分割財の配分、オークション設計、相互評価による表彰制度について分析を行い、良好な研究成果を得ることができた。特に、相互評価による表彰制度と非分割財の配分について優れた研究成果を挙げることができた。 相互評価による表彰制度については、Holzman and Moulin (2013, Econometica)が、表彰対象者が1名である場合、耐戦略性、正の全会一致性、負の全会一致性を満たすメカニズムが存在しないことを証明した。一方、Tamura and Ohseto (2014, Social Choice and Welfare)は、表彰対象者が複数であることを認めることにより、次点付き多数決メカニズムが耐戦略性、正の全会一致性、負の全会一致性を満たすことを証明した。相互評価による表彰制度の設計は新しい研究領域であり、そこで先駆的な研究と異なる方向性を持つ研究成果を発表できたことは重要である。 非分割財の配分については、平成27年度までに、Ando, Kato, and Ohseto (2008, Mathematical Social Sciences)の分析を踏まえ、「耐戦略性、対称性、予算均衡を満たすメカニズムは存在しない」という強い不可能性定理を発表した。平成28年度の研究では、この不可能性定理を回避するべく、非分割財を必ず配分するという仮定を弱めて分析を行い、いくつかの重要な性質を発見した。
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