2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380221
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
桃田 朗 立命館大学, 経済学部, 教授 (30309512)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マクロ経済学 / 人口経済学 / 経済成長理論 / 少子高齢化 / 人口減少社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
このプロジェクトの目的は、少子化が持続し、人口減少が続く中で、わが国の経済構造がいかなる方向に変化するかについて、ビジョンを提供できるような経済理論モデルを探ることにある。 平成28年度には昨年度報告書に記載した以下のテーマに沿った研究を重点的に行った。1 人口成長と経済厚生の関係について、1976年にサミュエルソンが述べた「Serendipity定理」に対する理論的再検討。2 今日の少子化が起こるメカニズムを適切にとらえた理論モデルの模索。 1に関する具体的内容:Samuelsonは、人口成長率を適切に設定することで、社会的最適が競争均衡下で自動的に達成できることを、1976年の論文で発表した。この結果は「Serendipity定理」と名付けられ、現在までこの定理が成立するための条件の明確化や一般化が多数の研究者によってなされている。しかし、この定理に関しては、安定性分析が欠けているという大きな問題点が残されている。もし、定常状態が不安定ならば、人口成長率を適切に設定するだけでは、長期的な社会的最適を市場メカニズムによって実現することは不可能である。そのため、安定性分析を明示的に考慮したうえで、SamuelsonのSerendipity定理を再検討し、その政策的含意を明らかにする必要がある。本年度はこの点に対する分析を進めてきた。 2に関する具体的内容:人口成長と経済厚生の関係を表す代表的モデルである「世代重複モデル」をより一般化する試みを手掛けている。 これらの考察を通して、今日の少子化が起こるメカニズムを適切にとらえた理論モデルを構築し、経済厚生の視点から少子化問題を議論するための基礎を築くことが可能となる。本プロジェクトの意義はこの点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロジェクトの目的や意義に十分に応えることができる研究成果を平成27年度にあげることができた。論文数といった量的な点からはやや少ないが、分析の質の点からは、順調に研究が進んでいるといえる。ただ、今年度着手をはじめたテーマに関しては、分析上の難問に直面しているため、分析がやや膠着状態になっている部分がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には平成28年度に手掛けた、以下の考察の継続をメインに据える予定である。 (1) 1976年にサミュエルソンが述べた「Serendipity定理」の理論的再検討を行う。 (2) 「世代重複モデル」の一般化に関する考察。
研究成果は学術論文の形でまとめ、それを国際的査読雑誌に投稿するとともに、国内外の研究会や学会で発表する。
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Causes of Carryover |
平成28年度中に新たに開始しようと考えていたテーマへの着手が遅れたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の執筆にかかわる研究資料などの購入や研究打ち合わせのための費用に充てる予定である。
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