2015 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションの曖昧さの経済成長・生産性への影響の分析
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25380230
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
東 陽一郎 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80327692)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 曖昧さ / 経済成長 / 生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、イノベーションに曖昧さのある経済成長モデルを構築し、イノベーションの曖昧さが経済成長と企業の生産性にどのような影響を与えるかに関しての分析を行った。イノベーションの成功確率が単一の確率ではない場合、イノベーションを行う企業は成功確率を低く見積もり、成功後は他企業がイノベーションに成功する確率を高く見積もる。このため、イノベーションの成功確率に関する曖昧さが増加すると、イノベーションを行う企業が減り、経済成長は鈍化する。一方、イノベーションに成功した後に財を生産する企業は他企業の成功確率をより高く評価するので、生産性向上のための投資を控える。このため、企業の生産性は低下する。これらは、日本経済を取り巻く環境が不確実になると、経済成長率が低下し、企業の生産性が低下したことと合致している。また、本年度は経済厚生に関する分析も行った。企業はイノベーションに成功すると、品質が上昇した財が将来導入される。もし割引因子が小さいと、イノベーション活動に携わる労働者が多いほど、経済厚生は低下することがありえる。これは、経済厚生を最大化するのは、イノベーションが全く起きない経済成長率が0の状況である。この結果は企業が生産性向上のための投資を行わない場合には得られないことがわかった。 また、関連した研究"Comparative impatience under random discounting"が査読付き英文雑誌であるEconomic Theoryに近刊となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イノベーションに曖昧さの存在する経済成長モデルを構築し、分析を行っている。イノベーションの曖昧さが経済成長と企業の生産性に与える影響は分析されており、結果も得ている。このモデルでは、均衡で主体の持つ期待が異なることが特徴であるが、この点を一般均衡モデルの文脈でより精緻に分析することが必要である。また、経済厚生に関しても経済成長が0の状況が最適である可能性を示したが、この結果が経済政策にもつ含意を分析する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
このモデルでは、均衡で主体の持つ期待が異なることが特徴であるが、この点を一般均衡モデルの文脈でより精緻に分析することが必要である。このために、異質的な期待をもつ一般均衡モデルでの分析を試みる予定である。また、経済厚生に関しても経済成長が0の状況が最適である可能性を数値的に示した。この結果は企業が生産性向上のための投資を行わない場合には得られない。このような性質が他のモデルでも一般的に成立するかどうか分析を試み、本研究の結果の頑健性を分析する予定である。
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Causes of Carryover |
研究課題に関するモデルを作成し、分析は行っている。しかし、海外査読付き雑誌に受理されるためには、さらに完成度を高める必要がある。このために、次年度に使用額を有効に利用する必要性のためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究課題に関する研究論文を作成し、海外査読付き雑誌に投稿することを目標とする。このためには、支出の一部を英文校正にあてる予定である。また、研究論文の完成度を高めるために、国内・国際学会へ参加、それらでの発表をすることで、様々な研究者意見交換をする必要がある。このために、旅費に支出をする予定である。
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