2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380235
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
吹春 俊隆 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (40136031)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 一般均衡論 / シミュレーション / 所得分布 / パレート改善 / ジニ係数 / グローバル化 / EU / 公共財 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は,主に,これまでのシミュレーション分析により,所得分布の不平等に関する理論分析を行った.まず,第1に,最近注目を集めている,国内の所得不平等の拡大傾向と,(実は余り注目されていないが)国際的な所得不平等の縮小傾向を同時に描写できる理論モデルはないかということが吟味された.実は,伝統的なヘクシャー・オーリン(H・O)貿易モデルがこの傾向を持つことが示された.さらに,この伝統的なモデルは2国モデルであるので,それを3国モデルに拡張すると,上述の傾向(シミュレーションであるから確率で示される)は高まることが示された.つまり,グローバル化により,国内の所得不平等は拡大し,国際的な所得不平等は縮小する傾向があり,このグローバル化に参加する国が増加すると,その傾向が更に高まることが理論モデルで確認された. 第2に前年度の研究成果であるEUをめぐる理論分析に所得分布の不平等の視点を導入した.EUをまず第1段階で経済統合を実現し,その後,第2段階で政治統合を目指すプロセス(これをEUプロセスと呼ぶ)と定義した.その逆のプロセス,即ち,第1段階で政治統合を実現し,第2段階で経済統合を目指すプロセスを逆EUプロセスと定義する.前年度,EUプロセスはスムーズなプロセスであり(第1段階も第2段階もパレート改善である)逆EU プロセスはスムーズではない(第1段階はパレート改善であるが第2段階は必ずしもパレート改善ではない)例が示された.本年度はシミュレーションの数を1万回として,まず,そのロバストネスが確証された.さらに,EUプロセスでは第1段階でも第2段階でも国際的な所得分布の不平等は縮小する傾向があると示された.(ただしH・Oモデルと同様に,3国の生産関数と効用関数は同一であると仮定しなければならない事が必須であるに注意.これが現在のEUの抱える問題の原因と言えよう.)
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Research Products
(6 results)