2013 Fiscal Year Research-status Report
人工市場を用いたオーストリア学派市場過程論の実験的分析
Project/Area Number |
25380245
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
谷口 和久 近畿大学, 経済学部, 教授 (80268242)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人工市場 / 市場特性 / 裁定 / 交換の原理 / ザラバ市場 / U-Martシステム |
Research Abstract |
研究は交付申請書の研究計画の通りほぼ進んでいる。大まかには以下のような内容である。 オーストリア学派の市場過程論におけるカーズナーらの議論はおもに生産物市場における企業活動から着想を得たものであるが、これに対して本研究は金融市場における市場過程に関するものである。よって、金融市場の市場過程論の分析と展開に関しては、生産物市場におけるオーストリア学派の市場過程論のコアとなる部分を確認する必要がある。これらに関して、ある程度の知見が得られた。すなわち、オーストリア学派は18世紀の主観主義革命に始まり、その中から市場過程論が誕生したといえる。よって市場過程論の背景には経済学における主観主義革命があると考えられるので、この主観主義革命と市場過程論の関連を調べて考察した。近年の発展の著しい実験経済学や経済心理学にみられる「経済学の自然化」と関係が深く、またプルトロジーとしての経済学からカタラクティクスとしての経済学への転換とも関連するので、この方面の理論的探索を行っている。この方面の考察は来年度も引き続いて行う。 これらの理論的探索と平行して人工市場実験(U-Mart実験)による取引の基礎的なデータを収集した。平成25年度は7月から8月にかけて、本学の学生を主な実験参加者として人工市場実験(U-Mart実験)を行った。実験に協力した学生数はのべ100人近くになる。この一連の実験は、コンピュータ・プログラムマシンとの共同参加実験である。実験に関しては、市場過程論の分析の関連から一度きりの取引実験では得られることの難しい時系列に関するデータも得られた。市場で得られる利得に関して、コンピュータ・プログラムマシンに対して、実験参加者の学習効果が明瞭に現れ、参加者の利得はおおむね高くなった。市場に関する学習の効果がどのように取引の結果に反映されるか、市場過程の観点からも興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの点でおおむね順調に進展している。 第1は研究の目的から、得られた実験データの数理的な解析に加えてその根拠となる視点を必要とするが、その内容に関して、大雑把ではあるが知見を確認できつつある点である。とりわけ市場過程論の経済学説史的な背景の確認をして、その重要な点を掘り下げることが出来つつある。 第2はすでに開発済みのシステムを用いての人工市場実験(U-Mart市場実験)であるので、実験を繰り返すことで、必要なデータは得られている点である。平成25年度はのべ参加者数が100名近くになる実験を行った。コンピュータ・プログラムマシン・エージェントに対しての比較対象実験では、「学習」と取引成果に関連する結果が得られている。これらの成果は研究の初年度であるが、学会で報告することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究実施状況をふまえて、研究計画の通り推進する。 オーストリア学派は経済学研究において独自の理論を展開しているので、この方面の知見を広げるとともに、実験結果の評価に関して、その知見をどのように表現していくかを考察しなければならない。 具体的には、人工市場における取引過程が「市場過程論」で展開されている議論とどのように関連し、かつ表現されるのか、一層深く考察し調べていく。 なお、人工市場研究は国内だけではなく、海外でも行われているので、ある程度の知見をまとめて、海外にむけて発信もしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験参加者数が予定よりもわずかに少なくなって謝金費用が減ったためである。出張に関しては、本基金助成金より執行しなかったからである。 残金は研究成果の国際発信をするため、翻訳費用の一部に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)