2014 Fiscal Year Research-status Report
貨幣的循環理論の視点からの現代経済の金融化と緊縮政策に関する研究
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25380248
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
石倉 雅男 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80222983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 敦之 大月短期大学, 経済科, 准教授 (40461868)
小倉 将志郎 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (90515404)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 資金循環 / 証券化 / 金融規制 / 緊縮政策 / 認知資本主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,2000年代以降の金融不安定性の国際的展開を視野に入れて,金融の複雑化・高度化と経済の「金融化(financialization)」の進展に伴って,各国経済において緊縮財政政策が重視される傾向が強まる理由について考察することである.平成26年度には,研究実施計画に従って,次の研究を行った.(1)1970・80年代以降における経済の金融化について,金融機関のビジネス展開と,それらが主導する現代金融市場の変容(特に,モダンファイナンスに基づく「影の金融システム」の拡大,デリバティブ市場とレポ市場の急速な拡大,証券化の進展)の観点から捉え直し,大手金融機関の行動が金融化の進展に重大な影響を与えていたことを明らかにした.(2)現代経済における貨幣・金融レジームの質的変化を「貨幣的生産経済」から「金融的生産経済」への移行として把握する「認知資本主義理論(theory of cognitive capitalim)」の分析視角を,ポスト・ケインズ派マクロ金融動学の研究成果を踏まえて拡充し,金融化の進展と金融不安定性の深刻化との相互連関性を明らかにした.(3)ユーロ圏危機(特に,2009年以降に経常収支赤字と財政赤字を計上している国々に対して緊縮政策が課された経緯)の政治経済的次元の基礎にある金融構造上の要因を解明するために,ユーロ圏の決済システム(いわゆるTARGET2[汎欧州即時グロス決済システム])の制度的特徴を分析し,欧州中央銀行に対する各国中央銀行の「TARGET2債権・債務」の拡大が,周辺諸国(経常収支赤字国)に対して緊縮政策が強制される傾向,中心諸国(経常収支黒字国)から周辺諸国への資金供給の困難などの諸問題の反映であることを明らかにした.以上の諸テーマについての研究を,相互に連携をとりつつ実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金融機関の行動様式,および,証券化の進展を伴う金融市場の変容の観点から現代経済の「金融化」の構造を理論的・実証的に解明するという課題について,これまでの研究の体系化を進めることができた.「認知資本主義理論」の観点から現代の貨幣・金融レジームの質的変化を解明するという課題については,認知資本主義理論の分析視角を応用してポスト・ケインズ派マクロ動学の制度分析上の含意を考察するという研究の方向性を確立した.ユーロ圏諸国で緊縮政策が強制される金融構造上の要因を考察するという課題については,欧州中央銀行・各国中央銀行の財務構造の観点から,ユーロ圏の決済システムの制度的特徴を把握するための基礎作業をほぼ完了した.以上の研究成果は,学会報告,論文執筆を通じて発表している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には,研究代表者と分担者は引き続き担当分野の研究を進める.さらに,現代経済における金融化の進展,貨幣・金融レジームの質的変化,各国経済(特に,ユーロ圏)における緊縮政策とその金融構造上の要因,以上の3分野の研究成果の相互連関をより明確にし,研究成果全体の体系化に努める.
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Research Products
(8 results)