2016 Fiscal Year Research-status Report
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25380249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堂目 卓生 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (70202207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アダム・スミス / セン / 共感 / 公平な観察者 / 開放的不偏性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画にしたがい、平成28年度はスミスの思想とセンの思想の相違を検討した。具体的には、スミスの「公平な観察者」の概念がセンの「開放的不偏性」と一致するか否かを検討し、次のような結論を得た。 『道徳感情論』において、スミスは、利己心とともに共感が社会秩序を支える重要な人間の性質であることを示した。共感は、人間の人間に対する「善意」(good will)に基づいている。人間は他人と相互に共感を繰り返しながら、自分が所属する共同体で通用している「公平な観察者」の見方を学び、それを胸中に取り入れる。そして、「胸中の公平な観察者」を通じて、他人の行為だけでなく、自分の行為の適切性を判断する。胸中の公平な観察者は、正義を侵犯する行為、すなわち他人の生命、身体、財産、名誉を傷つける行為を非難し、仁愛的な行為、すなわち他人の幸福を推進する行為を賞賛する。人間は胸中の公平な観察者の非難を避け、賞賛を得るために、正義と仁愛の「奉仕」(good offices)を行う。スミスは、人間の善意は国境を越えて広がりうるものの、国境を超えた奉仕を行える人間はほとんどいないと考えた。 他方、センによれば、特定の共同体内で通用する不偏性――セン教授はそれを「閉鎖的不偏性」と呼ぶ――は、より広い共同体の不偏性によって吟味されなくてはならない。そして最終的には、「人間である」という立場から考えた場合の「開放的不偏性」に従わなくてはならない。 センの「開放的不偏性」は、スミスが求めたものの明らかにできなかった「開かれた公平な観察者」、すなわち人類が国境を越えて「奉仕」し合うための道徳的基礎に該当する。この意味で、センの業績は、スミスが残した課題に解決を与えようとする歴史的に意義のある仕事であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スミスの「公平な観察者」の概念とセンの「開放的不偏性」の概念の関係を明確にすることができた。そのことによって、前年度までに研究したロールズやベルクソン、ナイトの思想とスミスの思想との関係もより明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本課題の最終年度になるので、これまで研究してきた内容をまとめ、スミスの思想を中心としつつ、ロールズ、セン、トクヴィル、ナイト、ベルクソン、ケインズの思想を加え、今後の日本や世界を考えるための思想的基礎を構築する。
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Causes of Carryover |
書籍の収集と読解に中心を置き、かつ研究の進捗状況に応じて書籍を購入したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
金額的に大きくないので、平成29年度中に執行可能である。書籍の購入または旅費として支出する予定である。
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